誠、紀子の実家、酒蔵ヘ初めて訪問

次の日曜日、誠は西梅田に向かい、そこから阪神電鉄に乗り込んだ。前日の土曜日、仕事を終え、帰宅した誠は、かるく作れる夕食の支度をして食した。そして、紀子に電話した。

「あっ!もしもし、明日、実家にお邪魔するので。どこまで行けばいいのかな?」

「あっ!お仕事お疲れ様。うん!とりあえず、阪神電鉄の石屋川駅で降りてくれれば、私、そこで、9時頃に待っているから」

「あぁ!はい!じゃ明日9時に石屋川って駅に行くので!」

「は~い!じゃ待っているね」

・・・誠は阪神梅田駅から御影まで特急に乗り、御影で普通列車に乗り換えた。御影駅の次の石屋川駅に着いた誠、改札を出た所で紀子と合流した。


「おはよう!お酒の街、灘にようこそ!」紀子は誠に挨拶して、誠に聞いた

「すぐわかった?」

「うん!阪神電鉄も時々利用してたから、石屋川駅って初めてだったけど、わかったよ!」

二人は、石屋川駅から、公園内を歩いて行った、しばらく行った所で

「ここに、昔の酒造りの時に利用した井戸が有ったのよ」

紀子は、井戸が有った跡地を指さして言った。

「へえー!昔は、井戸水を使ってたの?」

誠は跡地あたりを眺めた。その後また二人は、歩き始め、紀子の実家に向かった。実家に着いた二人。

「ねえ!あの入り口に吊ってある、緑の丸い玉みたいな物は何?」

誠は、指さして紀子に聞いた

「あぁ!杉玉よ!酒琳とも言うの!」

「すぎたま?さかばやし??」

「お酒造りを始める時、いいお酒が出来るように願いをこめて、松尾様に『お搾り始めます』と報告を兼ねて、吊るしてるの」

「松尾・・・松尾様って、お得意様?」

「えっ!い・・いや!松尾様って、お酒の神様の事なの!」

「お酒の・・・神様?」

「ええ!京都の西京区に松尾大社って言う、お酒の神様を祀った神社が有るわ!」

「西京区・・・?」

「嵐山の所よ、あと、奈良の桜井市にも有る大神神社もお酒の神様を祀っているみたいだけど、うちは松尾様ね。毎年、お酒造りを始める時、松尾大社にお参りに行くわ!」

「へえー!京都には、行った事無いので、よくわからないけど、嵐山はテレビで観た事有るよ、渡月橋とか言う、木の橋が有るよね!」

「あら!誠君、京都に行った事無いの?今度、機会があれば行って見ようよ。松尾大社にも、あと、清水寺や八坂神社に金閣寺・・・」


「あぁ!お嬢さん、お帰りなさい、おう!ハンサムなお兄さん連れて来たのかい?」


紀子が誠と話をしている時に、男性が声をかけた。


「あぁ!ただいま!誠君よ。こちら、杜氏の坂岡さんよ」

誠は頭を下げた。


「木下誠です・・・あのー・・・とうじ・・って何ですか?」


「杜氏って、お酒造りの中で欠かせない責任者よ、会社で言うと主任ってところね!」

誠と紀子は、坂岡氏に連れられて、酒蔵の中に入って行った。

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