紀子は、お酒好き

昼食後、誠と紀子は、道頓堀から難波方面に向かった。「誠君、黒門市場に行ったことある?」                 「エッ!いや、初めて聞いたんだけど、どこに有るの?」                「ここから近い場所に有るわよ。私、大阪で一人暮しをしていた時はよく行ってたわ。今から行って見ようよ」             二人は、約20分程で、日本橋の黒門市場に到着した。                 「へぇ!けっこう賑わっているね」

誠は、初めて訪れた黒門市場に驚いた。       

「そうでしょう!けっこう、いろいろ揃っているみたいよ、私も仕事を終えた後、ここに寄っていろいろ買って帰るわ、夜には、お酒といっしょに食べたら美味しいわよ!」     「エッ!紀子さん、お酒呑むの?」

誠は、驚いて聞いた。                

「えぇ!私、けっこう、呑む方よ、誠君は、お酒呑まないの?」            「あっ!いや!ゼンゼン呑めなくて!呑んでもすぐに吐き出してしまうくらいで、かなり弱いほうだよ。へぇ!お酒呑めるなんて意外!」   「うーん、今度、ウチの実家に来れば解ると思うわ。実家が酒蔵なの。神戸も、有名な酒蔵がけっこう有るのよ。今度、実家に招待するわ。」                 「エッ!あっ!でも、お酒呑めないから、行っても・・・。」              「大丈夫。ただ見学するだけでも大歓迎よ。お酒造りって、けっこう面白いよ。無理して飲まなくてもいいから。誠君、まだ、ウチの実家に来た事無かったでしょう?お母さんも、是非うちに来て欲しいと言っていたし!」誠はやや遠慮ぎみだったが、後日、都合をつくって紀子の実家を訪れる予定にした。その後、二人は黒門市場内を歩き周り、いろんな店を見て周った。

「あら!お嬢さん久しぶり!元気してた?」声をかけてきたのは魚屋の女将さんだった。   

「あっ!お久しぶりです。」          

「お嬢さん、今日は、デートかい?ハンサムなお兄さんを連れて。」           


「ええ、誠君です」           


「あっ!はじめまして、木下誠です」

誠は、かるく会釈した。             

「誠君だね。どこから来たの?」     


「エッ!あぁ、今は、西成区の玉出という所で、一人暮しをしています。淡路島の洲本出身です」                 

「あら〜、淡路島から?・・・大阪に就職したの大変だったでしょう?」        

「あぁ!はい。最初は、いろいろ知らない事だらけで苦労したけど、今は、もう慣れてきたので、なんとかやってます」        

「あら〜よかったわね!ところでお兄さん、自炊しているの?料理は出来るの?」     「あっ!いえ、ほとんど外食ばかりで」  

「あらら!それは良くないわね!お仕事中は無理でも、休みの日には、自分で料理出来るようになったほうがいいわよ。ここなら、なんでも揃っているから・・・。休みはどこで食べているの?」                  

「はぁ!道頓堀なんかよく行ってますが」 

「まぁ!道頓堀なら、良い店有るわね、でも晩ごはんぐらいは、自分で料理したほうがいいわ。ここまでそう遠くないし、ちょっと寄って買い物して、自炊したほうがいいわよ。良い物揃っているし、安くしとくよ。」     

「あっ!ありがとうございます。」誠は、深々と頭を下げた。             

「何か、いいの有ります?」

紀子は、女将さんに聞いた。いいのが有れば、買い物して、家に持って帰るつもりだった         

「ああ、お嬢さん、いいの入ってるよ。お酒と一緒に嗜むならお刺身の方が良いよね」  

「あっ!いえ、母親に、お土産として持って帰ろうと思って!」            

「あぁ!お母さんは元気してる?あの地震でお父さん亡くされて、大変だったでしょう?」 

「ええ、今は、お陰さまでなんとかやってます」紀子は、会釈した。         

「今日は、マグロのいいのが入ってるよ、これでいいかい?」             

「あぁ!はい!それ頂きます」

紀子が返事すると、女将はマグロの切身をビニール袋に入れ、紀子に手渡した。            

「あっ、ありがとうございます」

紀子は、また会釈して、お金を支払った。       

「どうもありがとう、また来てね。お兄さんも是非買いに来て、自分で料理出来るようにね。自分で作った料理は良いよ、お酒と一緒だともっといいんじゃない?」         

「あっ!いえ・・・・!」

誠は、やや驚いたようだ。                  

「女将さん、誠君、お酒呑めないみたいで」

「あら!ごめんなさい。お酒呑めないんだ!・・・お兄さん、ゆっくりでいいからね。わからなかったら、なんでも聞いてね。レシピもあげるから」             

「あっ、ありがとうございます」

二人は、かるく会釈してその場を立ち去り黒門市場内を再び見て周った。他には、精肉店等も見て周ったが、買い物はしなかった。        

「誠君、何か買う物有る?」       

「うーん、今の所無いかも、コロッケ等が有れば、買ってたけれど、無いみたい」

どうやら、コロッケを欲しかったみたいだったが売っている店は無かったようだ。しかし      

「あっ!カレー売っている!」誠は、カレー屋を見つけ、ビニール袋に入ったカレーを目にした。

「とりあえず、このカレーを買って、ライスが有れば・・・」

そのカレーはこの店お手製のカレーの様だった。自宅にテイクアウトしてライスにかけて食す用のカレーの様だ。誠は、カレーを購入した            

「大丈夫?これだけで足りる?他にも有るわよ」紀子は誠に聞いた。           

「うーん、あとは、どうしょう!」    

「サラダなんかも一緒に買っておこうよ。私も、サラダも買って帰ろうと思ってたから!」

二人は、黒門市場内に有るコンビニに寄り、サラダやライス、唐揚げ等を購入した。黒門市場をあとにした二人は、日本橋のでんでんタウンを通り、通天閣方面ヘ。

「あれが通天閣なんだよね」

誠は、指を指して紀子に言った。  


「うん。登ってみる?」

紀子が聞いたが   


「あぁ!いや、何回か行った事あるよ・・・。今の通天閣って、だいぶ替わっているけど、もともと新世界にフランスの名所を持って来たいと思って建てられたんだよね!パリに有る凱旋門の上にエッフェル塔を組み合わせたのが、最初の通天閣なんだよね」         


「うん、そうみたい。私もテレビかなんかで聞いた事有るわよ。大阪人の発想って面白いよね・・・。ねえ!通天閣によらないんだったら、今宮戎神社に寄っていい?」      


「えっ!あぁ、えべっさんで有名な、商売繁盛の・・・。」              


「うん。私はいつも、西宮神社の方に行ってたけれど。」               


「西宮神社って、よくテレビで観るけど、十日戎の早朝に、福男を決める駆けっこをやっている所だよね。みんな凄いダッシュで駆け抜けて行くのよく観てたよ、転倒者もいて、かなり痛そうだけど」              


「うん!あれは、もう西宮神社の名物になっているわ!」

二人は今宮戎神社に向かった。かなり閑散としていた。           


「今は、ひっそりとしているけど、1月の9・10・11日、特に本えびすの10日は、凄い混んでいるみたい、もう、もみくちゃにされた事もあったよ」             


「あら!誠君、十日戎に行った事有るの?」 


「うん!1回だけ。初詣よりも凄かったの覚えているよ。西宮神社の方も凄い混んでいるのかな?」                 


「ええ!かなり混む方ね!」


二人は今宮戎神社内を観て周り                


「もうそろそろ帰ろうか?」


紀子は言った  


「うん!そうだね、じゃ、今度の休みの日にでも、一度、お邪魔しますよ!」      


「うん!今夜帰ったら、また電話入れるわ」


二人は、地下鉄の大国町駅に向かい、ここで、別れる事にした。             


「じゃ!また。家に着いたら、電話入れるね。今日は、ありがとう」          


「うん!こっちこそ。ありがとうね」・・・

夜、誠は黒門市場で買ったカレーを温め、食べようとした時、携帯電話が鳴った     


「もしもし、誠君?今家に着いたわ。今度の日曜日にウチの実家に招待出来るようになったわ。お母さんに話したら、大歓迎だって、また、時間が決まったら連絡するわ。今日は本当にありがとうね・・・カレー食べた?」  


「あっ!うん!今、ちょうど食べているよ。けっこう美味しいよ、こっちこそ、今日はありがとう。また来週日曜日にね、おやすみなさい」


「うん!おやすみ]

・・・週明け月曜日、誠は会社に出勤した。

「おはよう御座います」 

 「おう!おはよう。どうした誠、なんかいい事有ったのか?いつも以上の笑顔だな!」

同僚が誠に言った                

「それに!なんか日焼けしてないか?海に行ったのか?」                

「えっ!日焼けしている?一昨日、海の上を歩いたけどね」               

「へっ?海の上?あぁ!そういえば、もうすぐ開通する、明石海峡大橋を歩いたのか?」  

「うん!歩いて渡ったよ」

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