第43話 人肉
アイヌの伝説のひとつに、猫女房が登場する。
その雌猫はあるアイヌ男性に惚れたが彼には妻子がいた、猫は邪魔な妻を殺し、その肉を食べてしまう。まんまと彼の妻に化けたのち、子供たちの内の兄と姉も犠牲になった。
下の娘は母親が村はずれで猫に姿を変えるのを見て後を付けると、半ば食べられた姉の死体を発見、猫は退治されるのだが、あまりの生々しさに仰天した。
妻がいる男に惚れて我が物にするのも異様だし、他の家族に手を出したのは、人の肉があまりに美味いから、なのだ。
熊に襲われて死亡する事件は珍しくないが、遺体を食べてしまう熊もいるというから、やはり人肉は美味なのだろうか。
人肉を食べるというと飢餓の果てに戦友の死骸を、とか。アンデスの山中に墜落した飛行機の乗客が、亡くなった乗客を、など。生きるためにやむなく、というケースが思い浮かぶ。
「カニバリズム」、食人俗というものも存在するが、猫女房のように、おいしいから食べたい、訳ではなさそうだ。人の肉は化学調味料に似た味と聞きくが、グルタミン酸の味なのだろうか。
1981年の「パリ人肉事件」は日本人留学生が、パリでオランダ人女性を射殺、遺体の一部を生で、あるいはフライパンで焼いて食べるというものであった。彼は人肉を食べたい欲求があったとも言われるが、結局、詳細は不明のままだ。
狂牛病というものもあった。牛の餌として牛骨粉を与え、つまり共食いをさせ、食べさせられた牛を食べた人間が死ぬという連鎖。日本でも犠牲者が出たようだ。
狂牛病の話題でもちきりだった頃、かつての同僚、S君が言った、なるべくヒトから遠いものを食べるのがいいらしい、肉よりキノコとか。
だから、というわけでもないが、今もせっせと野菜や大豆製品を食べているし、キノコも大好きだ、いかにも人間から遠そうな菌類なのだから。
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