食事
「きゃあああああ!」
地下室から出て来た悪魔が最初に見つけたのはメイドの女の子だった。
「うまい・・・・もっと・・・」
逃げようとした侍女を、後ろからかぶりつき、顔は恍惚としていた。
「いったいどうした!!って何者だ貴様!!」
「来た・・・」
近くにいたのだろう、悲鳴を聞き駆けつけた3人の若い執事を見つけると、悪魔は3人の方へ向き直った。
「君たちは報告を、ここは私が足止めする!」
先頭にいた執事が、後輩に指示をし、逃がすと、震える脚で、悪魔の方に殴りかかろうと突っ走った。
「うおおおおおおおっ・・」
しかし、その拳は届くこと無く、悪魔の尻尾によって胸を貫かれた。
「・・お前もうまい・・・逃げた奴は?」
悪魔は、ペロリと食べ終えると、2人が逃げた先を見た。
「先輩には悪いけど、逃げれて良かったな。あんなの相手に出来ねぇよ」
後輩らは息を切らしながら必死に走っていた。
「先輩大丈夫かな?」
「はぁ?無理に決まってんだろ!とりあえず俺たちは一安心だn」
心配する後輩に対し、もう1人は仕方ないと切り捨てた。
「・・?どうしたの、急に無言になって・・・!?」
会話が途中で切れたことを不思議に思い、振り返った。
クチャ・・ゴリ・・・ズズ・・
「まずいな、お前・・何の違いだ?」
そこには、顔が半分無くなっている同期と、その血肉をすする悪魔がいた。
「う、うわあああああ」
その叫び声が、彼の最期の言葉であった。
「お前、うまいな。うん、怯えてる方が・・うまい?」
体長が3メートルほどになった悪魔は、あることに気づき、その知性を持ってして、あることを企んだ。
「局長!大変です」
「どうした?外が何やら騒がしいが、そのことか?」
保安局局長室に飛び込んできた部下の焦り具合に、自身も気になっていたことを尋ねた。
「はい!おそらく・・・悪魔が出現しました」
部下は、恐る恐る、しかし急ぎながら答えた。
「!!・・どこに?」
「ここ、王城の中です!!」
「馬鹿な!王城の中で現れるなど・・・まさか、あの部屋が?」
シーフォリオはとある可能性を導き出したが、ありえないと首を振った。
「局長!お耳に入れたいことが!」
再び、別の部下が飛び込んできた。
「次は何だ!」
「先ほど、第1王子であるジューノ様が壁をすり抜けていったんです。数分後に、またその壁から出てきたと思うと、身体が、その、醜くなっていて、侍女を・・喰らっていました」
その報告を聞いたシーフォリオは、片手でこめかみを押さえ、ため息をついた。
「く、やはりあの部屋か・・・しかし、なぜあの部屋のことを知っている。王も王子達にはまだ話していないと、つい先日、仰っていたのに・・・」
切り捨てたはずの可能性が現実味を帯びてきたことで、新たな疑問が湧いてきた。
「そのとき、王子と一緒に誰かいたか?」
王城の中のトップ層に裏切り者がいるかも知れないと考えたシーフォリオは部下に尋ねた。
「はい、ここ最近いつも王子と一緒に居た、少し歳のいった男の執事が一緒に。あ、しかし出てくるときはいませんでした」
その解答に、より一層疑問が増えた。
「・・・ふむ、そうか・・・ん?どうした」
シーフォリオはもうひとりの部下が、眉をひそめていることに気づいた。
「いえ、あのいつも一緒に居た執事って、若い男だと思うのですが、それこそ10代の・・」
部下は、自分が間違っていたのかと、少し不安げに答えた。
「どういうことだ?・・・幻術?いや、それにしてはこんな長時間しかも、同時に別の人間に見せるなど、人間の範疇を超えている。それこそ、悪魔くらいの・・・!!」
シーフォリオは少し考え込むと、とある結論に至った。
「なぜ、気づかなかった!」
「・・というと?」
自分を責めるシーフォリオに、部下は顔色をうかがいながら尋ねた。
「その執事が悪魔だったんだ!」
その部屋を知る者は、初代勇者と、その仲間達、これまでの歴代王とそれに使える重鎮達、そして、その部屋に封印されている、悪魔本人であった。
「きゃああああ!!」
「ハハハ!なんだこうすれば良かったのか!」
街に出た悪魔は、人々を殺し、家を壊していった。
「そうだ、もっと恐がれ!怯えろ!」
逃げ惑う人々の歪む表情に愉悦を覚えながら、次々に食い殺してまわった。
「おかあさーん!どこー!」
「リリカ!どこにいるの!・・リリカ!」
「おかあさん!」
逃げ惑う人々の中からやっとのことで、見つけた母子はぎゅっと抱きしめ合った。
「良かった・・・本当に・・よかっ・」
「やぁ!そして、さようなら」
母が顔を上げると、にやっと口が裂けた悪魔が、大きな口を開け、迫った。
「いただきまーs」
ボゴっという音と共に、悪魔が吹き飛んだ。
______________
ちなみに、新作を執筆中ですがストックがないのでゆっくり更新していこうと思います。
また、新作お披露目はある程度ストックが貯まったら最初だけポポンと出す予定です
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます