完成?

「・・・理論的にはこれで飛べるはず」




「おお、これはロマンの塊だなぁ」




キールは起きたミルカに連れられて研究室に来ていた。そしてキールが目にしたのは、頭と胴体だけ露出しており、背中から飛行機のような羽が生えた小型のモビルスーツであった。




「・・・これを装着すると、自由に空を飛べるようになるはず」


ミルカは自慢げに控えめな胸を張りふふんと笑ってみせた。




「本当にすごいな、これは予想以上だよ」


そうキールが褒めると、ミルカは照れていた。




「・・・でも、まだ成功かどうかわからない。実験しないと」




「それじゃあ、早速やってみよう。王都の外だったらまわりに迷惑かけないでしょ」




早く試したいのか、二人は足早に草原へ向かった。




「予想していたけど、やっぱり街を出るまでにすごい見られたね」


キールが少し恥ずかしげに呟いた。




「・・・存分に見るといい。これは世界を変える」




「なんだか、悪役みたいになってるよ」


ミルカは意外とノリが良かった。




「まぁ、それは置いといて早速やってみよう」




「・・・ん、わかった」




そう言うとミルカはモビルスーツを着た。キールが少し離れるのを確認するとスイッチオンという掛け声とともに、背中の噴出口からジェットが勢いよく噴射され、轟音が鳴り響き始めた。




そうすることわずか数秒。次の瞬間にはミルカは大空へ羽ばたいていた。




「さすがミルカだね。これは成功と言って問題ないな」


キールは大空を自由に舞っているミルカをみて改めて、天才の名を冠する少女を讃えた。




暫くして、地上に降りてきたミルカに尋ねてみた。


「どうだった?ミルカ的には成功?」




「・・・ん、一応。でもまだまだ改良の余地はある」


ミルカは渋々といった感じで満足していなさそうだ。




キールはそんなミルカをみて、忘れていたことを思い出した。




「そうだ、ミルカのヒントになるかもしれない場所があるんだけど、行きたい?」




「・・・行く」


ミルカは少し目を輝かせた。




「うんうん、それじゃあ行こうか。今から」


にこにこ








王城門前




「止まれ、何の用だ」


門兵がいかつい顔でキールを睨みつけた。




平民が何の用だって感じだなぁ。




「地下書庫に行きたくて、はい、これその権利証」


キールが懐から手紙に同封されていた、紙を見せた。




「これは、本物!?しょ、少々お待ちを」


そう言い焦った表情で、門を開け始めた。






門から王城までの長い道のりをやっと歩ききり、王城に入ると、シーフォリアが出迎えた。




「ようこそ、キール殿。門兵から先ほど連絡があってな。おや、そちらのお嬢さんは?」




「お出迎え感謝いたします、シーフォリア様。こちらは弊社の社員のミルカと申します。彼女はとても賢く、調べものしたいとのことでしたので、連れてまいりました。」




「・・・ん。どうも」




「なるほど、今回はせっかく来ていただいたのだから仕方ないとして、あまり、お主以外の人を連れてくるのは、歓迎しがたいので、気を付けてほしい」




「申し訳ありません。以後意を付けます」


まぁ、おそらくもう二度と来ないとは思うけどね。






それから、談笑をしながら3人は地下書庫に向かった。




重厚な扉を開けると、少し冷えた空気が身を包んだ。




「ここが地下書庫か、なにぶん私も入るのは初めてで少し浮かれているよ」


シーフォリアがそう言ってる隙に、ミルカはさっさと中へ入っていった。




「すみません。あの子はすごく知識欲が旺盛でして、今している研究のヒントになりそうなものに対しては突っ走る癖があるものでして」




「かまわない。しかし、お主の社員は皆一癖あるものばかりだな」


シーフォリアは、無理やり背負われ、凄まじいスピードで走ったグランツを思い出していた。




「その分、優秀なところもあるんですけどねぇ」


二人は同時にため息をつき、各々気になる本を手に取り始めた。






キールはふと目についた本を手に取った。




「王国と悪魔の因縁か。ずいぶん古そうな本だな」


ぼろぼろに擦り切れている表紙をみると、そこには著者の欄に「ノーベルト=オルガノ」と載っていた。初代国王の名前である。




「へぇ、悪魔が狙うものねぇ」


その内容を読むと、初代勇者が悪魔が何を狙っていて、なぜ王国を作ったかの理由が書かれていた。




「面白い小説だったなぁ。文才もあったのか」


内容が興味深く読み込んでいた。ふと気づくとかなり時間がたっていたようだ。




「ミルカ?そろそろ帰りたいんだけど」


ミルカを探しながら書庫を歩き回っていると、一か所に本の山ができていた。




「ミルカ?」




「・・・ここをこうして・・・いや、こうか・・・あ、なるほど」


ミルカは集中していて、キールの呼びかけに気づいていないようだった。




「・・・なるほど、こうすればいいのか」




「お、終わった?」




ミルカはふと後ろからかけられた声に振り返った。




「・・・うん、今何時?」




「あれから、2時間たったから7時だね。そろそろ帰ろっか」




「・・・わかった。おじさんは」




「先に帰っちやったよ」


キールはおじさん呼びに笑いながら返事した。




キールは書庫守に帰る旨を伝え、城を跡にした。


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