「姫様、何やら冒険者らしき者たちが急速に近づいております。窓から顔を出さないようにしてください」




「おい!王国の人か!もっと馬を走らせろ!サンドワームの標的になっているぞ!」






「ハッ!!」


冒険者二人の言葉に一行は、瞬間的に馬を走らせた。




走らせたその瞬間先ほどまでいた場所に、爆音と共に砂塵が舞い起こった。




「クソ、あの小僧の言うとおり、サンドワーム自体に襲われるようになるとはな」


シーフォリアはキールがはなった言葉を思い出した。




いったい、どこまで未来が見えているのか。




シーフォリアは、その人並み外れた力量に、王都の貴族で彼に勝る人物がいるのだろうかと、貴族としてのプライドに疑いを持ち始めていた。






「あのサンドワーム、我々だけを追っているようです。一切あの冒険者達を攻撃する素振りがありません」




ミモルグが異変に気づき、シーフォリアはこれが悪魔の仕業だと言うことに確信を持った。




徐々に木の間隔がまばらになってきた頃、馬と人の速度の差により、アントレット一行と随分距離を離された。






なんだか声が聞こえるが、それどころじゃないな。




ロイの頭の中に小さな声が響いていた。が、目の前の危機を救うために後回しにした。










「きゃぁ!!」


ガタッという音と共に、馬車の車輪が木の根っこにぶつかり、車輪が壊れた。それと共に、馬車は体勢を崩し、アントレットは地面に放り出された。






それを好機と思ったのか、頭を地面から出していたサンドワームがアントレットに向かって大きな口を広げ襲いかかった。






サンドワームはその口を肩に思いきり食らいつき、ミモルグは苦渋の表情を浮かべた。




「ミモルグ!!」


アントレットは、他の兵士に抱えられながら自分を身を挺して庇い、代わりに噛まれたミモルグの身を案じた。




負傷したミモルグをめがけてサンドワームは次々と襲いかかろうとした。




「フン!」




そうはさせまいと、他の兵士やシーフォリアがミモルグとアントレットを守るように立ちはだかった。




「私は、王国直属保安局の一人です。王国を守ることが役目。子どもの頃から憧れた仕事です。ならば、意地でも、この身を挺してでも守るのです。私のプライドに懸けて」




血を流しながら、ミモルグは剣を握り、立ち上がった。




「よく言った。それでこそ私の部下だ。」




シーフォリア達は多勢に無勢とみて、馬車を捨て、アントレットとメイドを馬に乗せ、再び、走り出した。










「うふふふ、飛んで火に入る夏の虫とはこのことでありんすか?」




走り出してすぐ、どこからともかく声がした。




「く、おでましか・・・」


シーフォリアは今一番会いたくない者を想像した。




すると目の前に突如現れたのは、般若の仮面を被り、着物を着ている宙に浮いている女だった。




「私は、青の悪魔『憎悪の悪魔』でありんす。ここに、たんまりとモンスターを用意させていただきました。倒せば倒すほど、そのお友達があなためがけて襲いかかりますので、おたのもうします」




するといつの間にか、木々の間からこれでもかと言うほどのモンスターが姿を現した。




「これは、盛大なプレゼントですね・・」


ミモルグが悪魔を睨み付けながら剣を抜こうすると








「お前らは先に行け」






シーフォリアは部下達に逃げるように指示した。




「しかし、一人で倒せるような相手では御座いませぬ」


「私は保安局局長だぞ?智謀だけじゃなれねぇよ、その腕力をも持ってして国を守るのが俺のプライドだ。早く行け!!」




シーフォリアは手でアントレットの乗っている馬を叩き、走らせた。






「すぐに追いついてきてください」


そういうとミモルグはその場を後にし、アントレット達を追った。






「はぁ、男気あふれる殿方ですなぁ。惚れてしまいそうどす。その男気に免じて、この場は見逃してあげますが・・・可哀想に、すぐ追いつかれ、散ってしまうでしょうなぁ」






「そうはさせんよ、私のプライドは国を守ることだ。それは若い芽を育て、国を次につなげることだ。そのためになら、この身が朽ちようとも悔いは無い」






シーフォリアがそう言い終わると、大量のモンスターと1人の老兵の戦いの火蓋が切って落とされた。






それと同時刻




ふとグランツは隣を併走していたロイの足音がなくなったことに気づいた。振り返るとロイの姿が見つからない




「ロイ?何処へ行った?」


グランツは罠の可能性を考え警戒して辺りを見回した。




すると、遠くからモンスターの叫び声が聞こえてきた。グランツはその方向がアントレット一行が進んでいた方向だと言うことを確認すると駆けだした。






ロイはそう簡単にやられるヤツじゃねぇ、大丈夫だろう。




グランツはロイの身を案じつつも信頼していた。






「おーい、グランツ!何処へ行った!」


ロイもグランツが消えた事に気がついていた。




「ちくしょう、お前が犯人か!さっきからどうやって俺に喋りかけてやがる!」






こっち、こっちへ来て、いそいで!じゃないと、手遅れになる!その前に。




ロイはこの状況を打破するため声の方へ歩いて行った。


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