大地
「なんだこれは・・・」
乾燥したこの場に、一家所だけオアシスのように密集して木々が生い茂っていた。その木々を分け入っていくと、開けた場所に出た。
「石碑?」
その中央に3メートルほどの大きな岩がツタに覆われ、苔むしていた。
それに近づくにつれて、聞こえる声は大きくなっていった。
私を解放して
「解放って、いってもな、どうすれば・・」
なんとなくではあるが、その石碑から悪い感じはしなかった。だからであろうか、ロイは自然とその石碑の声の言うとおりにした方が良いと考えていた。
「まぁ、なんとかなるだろう、火球」
周りのツタを燃やそうと、魔法を放った。ブワッと燃え上がり絡みついていたツタは焼け焦げたかに見えたが、火が静まると、ほとんど損傷していなかった。
「なんだこれ、普通の植物じゃないのか?」
しかたねぇとロイは自らの手でツタを剥がしにかかった。
同時刻、シーフォリアは
「はぁはぁ・・ゴふっ・・はぁはぁ・・」
「そろそろ限界でありんすか?多勢に無勢とはこのことどすなぁ」
「ふっ、老兵にしては良い最期だよ。若い芽を逃がす時間くらいは稼げたであろう」
「逃がしたところで、また潰しに行けば良いだけの話どす」
「俺はこんなに認めていたとはな、あの小僧のことを。お前には無理だよ、私はあんな強い者を知らぬからな」
「なんとでも言いはってください、どれだけ1人が強くても、数の差は大きいどす」
「ワハハハハ、バカめ、そんなヤツこそ負けそうだな。あやつの強さはそこではないからな」
「もうええ、はようくたばりなさいな」
そう悪魔が言うと、モンスター達は一斉にシーフォリアに襲いかかった。
すまん。シーフォリアは家族や王国のことを思い胸の内で謝罪し、来たるべき痛みを待った。
「大地の怒りワールド・イーター」
地響きがした。シーフォリアは薄く目を開けると、大地に咀嚼されているモンスター達が見えた。
そして、目の前に立つ男が1人
「そなたは・・・」
「配達会社グリフォンフライのグランツだ、どうかご贔屓に」
「あーもう、次から次へとうっとうしいなぁ。それに精霊の守人・・懐かしいどすなぁ」
悪魔は自分の思い通りにならないことが続き苛立ち、そこに現れたグランツを因縁の相手のように睨み付けていた。
「そなたのおかげで再び家族の顔が見れそうじゃい」
「喜ぶのはまだ早いぞ、なんせ俺は地上の敵には強いけど、飛ばれるとちょっとな」
「どうしたものか・・・」
「うふふふ、自分から弱点を仰るなんて、面白い殿方どすなぁ。ならばこちらから行かせていただきます」
悪魔は、そう言うと同時に空中に大量のクナイを出現させ、雨の如く打ち出した。
「土の壁!!」
降り注ぐ攻撃をグランツは地面を隆起させ防いだ。
しばらくそうしてグランツ達は防戦一方な状況を続けていると
「お互いに攻め手に欠けるようどすなぁ、私は飽きちゃいました、逃げた殿方を追うとしますかぁ」
悪魔は興味が無くなったのか、踵を返し王都のほうへ向かおうとした。
「大地の微笑みアース・ブレス」
悪魔は突然の強大な殺気に本能で、その場から交わすように身を捻った。
ピシッと般若の面にひびが入った。横目で確認すると、先ほどまで顔があった場所に、腕があった。
「別に、ちょっと疲れるだけで、攻撃手段がないわけじゃないんだよなぁ」
「土属性の精霊の守人が攻撃!?しかも空中の私に・・」
「確かに土属性は身体強化が一般的なんだけどよ。精霊の守人になる前の俺の二つ名知ってるか?」
グランツは重力に従って落下し、再び地面に立つと悪魔を見てニヤリと笑った。
「今ので思い出したわい。配達会社グリフォンフライのグランツではなく、伝説の冒険者グランツの方が知れ渡っている。そなたの二つ名は、怪力無双」
シーフォリアがそう言うと、グランツはシーフォリアにへラッと笑いかけた。
「照れるんだけどね、そんなわけで元々バカみたいな身体能力に身体強化を掛けると・・」
グランツは地面を蹴り、一瞬にして悪魔の元へ行き殴りかかった。
しかし、悪魔は予期していたのか、躱してみせた。
「いくら跳んでこれようが、より高く行くまでどすなぁ」
「行ってなかったが、空気を蹴れるようにもなる」
高度を上げる悪魔に、さらに空中を蹴り悪魔を追い殴りかかった。
それに対し、悪魔も突如空中に現れるクナイを駆使して、応戦していたが、先ほどとは立場が逆転し防戦一方であった。
グランツが攻めるも空中ではやはり悪魔に分があるのか有効打を与えられないでいた。
くそ、長いことは持たねぇっていうのに一撃を与えられねぇ。
異常なほどの身体能力の向上は身体に負担をかけるものであった。
未だ突破口を見いだせていないグランツは、これからの戦いが長引くであろうと少しずつ不安が頭をよぎり始めていた。
くそ、こんな目になっているのに、ロイは一体どこで何をしているんだ。
この状況を打破してくれそうな存在にグランツは期待するしかなくなっていった。
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