建国祭
「ふーんふふーん、ふーんふふふーん」
キールは浮かれていた。
その理由はここ王都が今お祭り騒ぎであるからだ。王都は先日から悪魔討伐以降冒険者たちの羽振りが良くなり、商人たちがどこからかそれを聞きつけ、出店などが増え、さらに建国記念日の建国祭と相まって、今までに類を見ないほど大きな賑わいを見せていた。
つまり、王都のお祭り騒ぎにつられているだけであった。
「やっぱり、お祭りと言えば、食べ物だねー。ね、ユリもそう思うでしょ?」
「まぁ、そうね。でもまだ悪魔を倒した余韻でそれどころじゃないね」
ユリは先日の戦いで覚醒したばっかりで少し疲弊と高揚感が残っていた。
「大変だったらしいね、それでも案だけ盛り上がれる冒険者たちは逞しいね」
キールは広場のベンチで昼間から酔い潰れ、いびきをかいている男たちを横目にそう言った。
「ところで、この前の仕事はどんな感じだったの?」
「ん?今更聞いたところでこれ以上社長が新しく知れる情報なんてないと思うよ?」
ギクっ!
まさか、俺が適当にふったから内容を一切知らないのに、エリーナから質問攻めにあって困っているなんて言えないしなぁ。
「あはは、そうかもしれないね。でもユリの感じたことを聞きたいんだ」
ニコニコ
「んーそうだね、依頼自体はいつもと変わらず、水の国イベリエへオークションで競り落としたらしいアクセサリーを届ける仕事だったんだけど、届けて返ろうとしたときに時に森の中で声がしたのよ」
どうやら森の中に入ると聞こえてきた声の方に向かっていくと、森の中に開けたところを見つけて、その中心に大きな木とその根元に祠があり、そこから声が聞こえていたらしい。
クサに覆われていた祠を綺麗にして、持っていた保存食をお供えすると「待っていました。精霊の守人よ」という声が再び聞こえ、気づけば最初に声が聞こえた場所に戻っていた。
その不思議な現象のあとから身体が少し軽くなったことに疑問を抱き、王都に帰ってきてから教会でステータスを確認すると「精霊の守人」という加護を得ていた。
ということらしい。
「な?私もこれぐらいしか知らないんだよ、新しい情報なんて無かっただろ?」
1から10すべてが初めて聞いたことだね
「そうでもないよ、知りたいことを確認できたから。ありがとう」
さて、これで次にエリーナに聞かれたとしても答えて威厳を保つことが出来るぞ。
「まぁ、今は仕事を忘れてパーッと楽しもうよ」
それに対しユリは口では肯定するも、表情はそれほど明るくはなかった。
そういうとこはユリもちゃんと女の子だなぁ。
「ほら、これとか多分ユリにぴったりだよ」
キールは目の前の店に置いてあった、少し控えめなシルバーに碧い宝石がはまったブレスレットを指さした。
「社長、忘れさせる気ないでしょ。すごい聖属性放ってるけど」
「どちらにせよ、それだけ聖属性を持っているなら戦力強化になるんじゃない?」
「私の場合少し特殊な使い方だからこれであってるのか分からないよ?」
「大丈夫だよ、きっと。ほら、ねぎらいに俺が買っておくよ」
「それなら、貰っておくよ、ありがとよ」
それにしても、社長は聖属性を発現していなよね、私でさえ言われるまで気がつかなかったのに・・・そして、社長がくれるって言うんだから何か意味があるのでしょうね。
「ふう、もうお腹いっぱいだ、少し食べ過ぎちゃったね」
お腹いっぱいになるとどうして、お酒飲みたくなるんだろう。
そうだゴールドラッシュに行こう。
「ユリ、少しだけ飲みに行こうよ。俺がおごるから」
「お、奢りかい?やったね」
そうして歩き始めた。
「まさかとは、思ってたけど本当にここか」
「やっぱり有名なんだ、ここは良いよ、少し高いけどお酒も料理も美味しいから」
「ある意味有名だね、ある意味」
「今日は少しいつもより騒がしいね。お祭りで皆浮かれているね、平和で良いことだ」
確かに店の中は普段より、人も入っていて賑やかだった。しかし、ところどころいつも以上に耳を澄ませている人がいた。各冒険者ギルドの情報収集班である。
こんなときでもしっかり仕事をこなすのはさすがと言ったところだろうか。
「ところで、建国祭の由来って知っているかい?」
「そう言えば聞いたことないねえ」
「建国祭は初代勇者にして初代国王を讃えるためにあるんだけど、実はこんな裏話があるらしいんだよ・・・」
「虹の悪魔を仲間と共に倒した勇者は、そのお宝を建国と共に、国民の代表1人に最も大事な財宝を一つ渡して隠したらしい、そして、そのお宝を見つけるのがこのお祭りの起源なんだって」
「そのお宝は見つかったのですか?」
「いいや、なんでもそのお宝は国が危機に訪れるとき、見つかるらしいよ」
そのとき、酒場ゴールドラッシュの扉を勢いよく開けられた。
「ここにキールという者はいるか!!」
・・・いません
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