3ー2 猛獣使い早見
― 理科室で男子たちによる放課後デート裁判が行われるさなか、一年三組の教室では、あるカップルの成立がまことしやかに囁かれていた…!
早見 渚の場合
「ねえ早見さん!昨日坂上君と遊んだってほんと!?」
― 噂話!
これは全ての人間が本来身に着けている、太古の昔から人類の発達に寄与してきた、「知りたい」という欲望から行われる、嘘も誠も誇張も矮小もなんでもありの、ただただエキサイティングとエンジョイを追い求める人間特有の娯楽である!
更に今回のような思春期真っただ中で青春を持て余している猛獣の囲いの中に、クラスの美女とイケメンの恋バナ♪、などという格好の餌がぶらさがってしまえばそれはもう食いつかれる他になく、そして一度餌に食らいついた猛獣は、それを噛みしめ堪能するまで決して放そうとはしないのである。
そう、質問を決め込む彼らの口調はいつも通りであっても、その目は、餌に必死で食らいつくサバンナのハンターそのものだった…!
さて、この質問は今日何度目か。昨日私が坂上を誘ったときの言葉が少しまずかったのか、今朝登校してから今まで、私はずっと質問攻めに遭っている。やっぱり、皆そういうことが気になるお年頃なんだなって改めて感じた。中学生の頃は誰も私にそんな好奇心を向けることはなかったから、こんな経験は初めてで、ちょっと気恥ずかしい。でもそんなことで照れてるとガチ感出てきちゃうから、今回も私は余裕な表情で、そういうのじゃないよ、って明るく答える。こうすれば皆は意外とすぐに納得する。そんな反応がなんだかおもしろくて、私は少し、それっぽく答えてみたりもしてみた。
私も変わったな、なんて思う。そもそも、クラスの子と話す機会なんてあまりなかったから。でも、そんな今の方が幸せなことくらいは、私でもわかる。それもこれもあいつのおかげかな。
「昨日は二人で何してたのー!」
だいたい二人じゃないんだけどねー。
こういう噂話は好きじゃないって人が多いけど、いざ実際そういうことを何度も聞かれても、意外と悪い気はしなかった。相手は、決して好きという感情とは違うが、憎からず思っている大切な親友だ。私たち当人が違うということがわかっていれば、別に、必死になってわざわざ否定しにいったり、嫌がる必要はないと思う。多分、それは坂上も一緒…
「おい早見頼む!昨日のことちゃんと説明してくれ!」
…違った。坂上も意外と思春期だねー。
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