第三話 天下分け目の班決め合戦
3ー1 放課後デート裁判、開廷!
― 先日のストーカー事件の翌日、坂上は、早見との放課後デート疑惑の容疑を晴らすことが出来ないでいた…!
坂上 優の場合
「わ、眩しい!」
差し込んできた日差しが、容赦なく俺の眼球を刺す。ここは理科室。暗幕によって日光は遮られていたが、前の机に座る人物が、開廷、と声を上げると、両脇に居た男子生徒たちが、一斉にカーテンを開いた。
俺が苦悶の表情を浮かべると、目の前にいるいかにも悪そうな顔をする男二人と、それを止めようとする友人一人が、それぞれの反応を示す。
「これは重罪ですよ、小洗裁判長。まさか、入学して一か月で、不純異性交遊をああも大っぴらに、それも私たちの前で見せびらかすように発言させるとは何たる行為、言語道断です!人間としての行為を逸脱しております!」
「そうだそうだ、蘇我の言う通りだ!やっちまえ!」
後ろから他のクラスメイトたちの怒号が胸に刺さる。
え、俺人間もやめてる設定なの…?
あのセリフ俺が言わせたことになってんのか。
てか蘇我、おめーを一瞬でも純粋と思った俺が馬鹿だったよ…!
様々な疑問や反論が頭に浮かんだが、とりあえず反発しても、ことは上手く運ばないだろう。俺は慎重に言葉を選びながら、できるだけ穏便に声を上げた。
「いや、あの、だから俺と早見はそういうんじゃなくて…。」
「被告は静かにしていなさい!今口を開く権利があるのは、そこの西園寺弁護士だけだ!」
どうやら、どうやっても穏やかに事を運ぶことはできないらしい。
西園寺君は名前を呼ばれると、はっと驚いた顔を見せた。そしてしばしの沈黙の後、もじもじしながら口を開き始めた。
「坂上君は誤解だって言ってるし、第一早見さんと坂上君が付き合ってても、それは別に本人らの勝手というか、その…。」
「違―う!!!!!!」
小洗が逆上し、西園寺君は実際にヒっと声を上げた。いや、キャラブレブレだなおめー。
「んん!失礼。確かに被告が誰と付き合おうと、それは被告の勝手であるし、俺達は応援するのもやぶさかではなかった。しかし、問題はもはやそこにはない。被告の罪状は、一人で黙って女子と仲良くなり、そして、更には俺たちからクラスのマドンナとして崇め奉ろうとしていた早見さんを奪い取り、陰では俺らのことを嘲笑っていたことだ…。なんでこいつばっかそんな、くそ…。」
泣き出す裁判長。それを慰める検事。片方が裁判長とずぶずぶなの、一番司法でやっちゃいけないやつだよ。
てか罪状、妄想と私怨じゃないか!
再びカーテンが閉められ、俺らの周りは暗闇に包まれる。
「それでは判決を下す。」
いや、待て。まだ証拠は何も揃ってないし、議論も深まってないんだけど。
「被告は有罪。罰としてサッカーの初期位置はだいたいゴールキーパーになることと、今日中に俺たちに女子を紹介することを命じる。以上、閉廷!」
後ろで一部始終を見守っていた他のクラスメイトの男子たちからも、歓声があがる。
この誤解、どうやったら解けるものか…。いや、無理か。てか、そもそも、俺そんな女子の知り合い居ねーよ…。
項垂れる俺をよそに、興奮を抑えられない様子のクラスメイト達が教室へ帰っていく。
理科室の鍵を返すのは・・・もちろん俺か…。
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