2-8ー2 美しきかな女の友情


― 自分の気持ちがわからない様子の青波。そんな彼女をよそに、女の友情もまた、綺麗に花開こうとしていた…!



 青波 美憂の場合  


 私たちは二階建ての一軒家の前に着いた。勘違いとはいえ怖い思いをした後だからって、皆はわざわざ家まで送ってくれた。坂上君は、俺は場違いだって先に帰っちゃったけど、本当に皆、親切な人たちだ。


 「今日は本当にありがとう、おかげで怖い目に逢わずにすんだよ。」


 それは、私の本心から出た感謝だった。まだ出会って一か月くらいの私のことをこんなに心配して、実際に動いてくれたことが本当に嬉しかったから。


 「だいたい私たちの妄想だったけどねー、実際大したことなかったし。」


 渚ちゃんは、顔の前で手を合わせて、軽くウインクした。ごめんっていうジェスチャーだ。


 「いや、そんな、謝らないで!皆が私のこと、自分のことみたいに心配してくれて、助けようとしてくれて私本当に嬉しかったんだから。一番怖かったときも皆がいてくれたから、勇気を持てたんだよ。」


 私がそう言うと、渚ちゃんはちょっと不思議そうな顔をする。


 「それは友達なんだから、当たり前でしょ?」


 莉子ちゃんと優衣ちゃんも頷く。名前もちゃんと覚えてなかった私のために、本当になんて優しい人たちなんだろ…。


 「じゃあまた明日ね、青波ちゃん。」


後ろを振り返ろうとした皆に、反射的に声をかける。


 「美憂、で、いいよ?」


 私は、無意識のうちにそんな言葉が出た自分が少し恥ずかしくなって、視線を落とす。さすがに、距離詰めるの早かったかな。


 そう思っていると、私の肩に四本の手が添えられた。左肩には優衣ちゃん、右肩には莉子ちゃんがそれぞれ手をおいて、その上から渚ちゃんが両肩を掴む。


 「おっけい!じゃあ美憂、また明日ね!」


 渚ちゃんがそういうと、莉子ちゃんと優衣ちゃんも続けて同じように言葉をかけてくれた、ちゃんと美憂って呼びながら。


 渚ちゃんは私の前でニコッと笑うと、綺麗に一回転して歩き始めた。シャンプーのいい香りが鼻を擽る。

 その瞬間私は、あー幸せだ、なんてちょっと大げさなことを思った。


 私は見えなくなるまで三人の後姿を見つめていた。あの時皆のことを信じることができてよかった、本当に大切にしたいと思える友達ができた、明日が早く来ないかな。そう思いながら見る三人と周りの景色は、少し滲んで見えた。


 …あと、もう一つ、この気持ちは一体なんだろう。


 ― 段々と熱気を増す春の陽気に照らされて、少年少女たちはそれぞれの想いを胸に、日常へと戻っていく。彼らの青春は、まだ、始まったばかりだ!


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