2-8ー1 きっと、夕焼けのせい
― 事件は一件落着。安堵する少女には、一風変わった新たな事件が勃発する!?
青波 美憂の場合
「俺も久々に頭回して楽しかったというか、何事もなかったんだし別にいいって。」
私はあの子が帰った後、すぐに皆に、特に坂上君に向けて頭を下げた。
「そうそう、ちゃんと犯人は見つけられたんだし一件落着じゃん。トランシーバー買った甲斐あったー。」
「いやそれは関係ねーよ。」
間髪入れないツッコミに少し頬が緩む。しかしすぐに顔を引き締めて、私は言う。
「でも、皆に心配かけて、時間取らせて、坂上君なんて今日初めましてだったのに…。」
声は聞こえない。私が恐る恐る顔を上げると、坂上君の顔が少し見える。
そうすると、彼は目を横にそらしてこう言った。
「友達を助けるのに、友情の深さとか、友達やってる時間の長さとか、そんなの関係ねーよ、うん。だから気にしないでくれ、調子狂う。」
その顔は夕焼けに照らされて、少し赤くなっているように見えた。
「ひゅーかっこいい!坂上ちょっと照れてるなー?。」
「やめろってマジで。」
坂上君は頭をかく。皆はそれを見て笑っていたけど、私は違うことに心奪われていた。
――― なにそれ、ずるいな。
最初は怖いと思ったその目つきは、今はちょっぴり優しく見えた。
♢♢♢
「いやー坂上君かっこよかったねー。事件もばっちり解決しちゃってたし。」
私たちは、見慣れた道に四つの影を作りながら歩く。
”いい親友持ってるでしょ、私。
あーほんと羨ましい。渚、私と一日、いや二十年くらい入れ替わんない?
妙にリアルな数字やめよーよー。”
事件が一段落ついて緊張がほぐれたのか、さっきからずっと、誰かが冗談を言っては皆でそれを笑っている。
でも、私は顔を上げられずにいた。さっきからは、所々目も瞑っちゃってる。
「青波ちゃんどうかした?顔真っ赤だよ?」
いつの間にか、渚ちゃんの顔が目の前にあった。どうやら顔を覗き込まれているらしい。間近で見ると、そのキョトンとした顔が、より一層可愛く見える。
「あ、もしかして青波ちゃん、、惚れた腫れた的な?そういう感じ!?」
莉子ちゃん…だったかな、とってもニヤニヤしてる。
「ち、違うよ!今日はいろいろあって、ちょっと疲れちゃって。」
「ま、それもそうだね。見てただけの私たちでもちょっと疲れちゃってるもん。」
彼女は優衣ちゃん…、だったよね。
「てか、よくよく考えれば私たち、何もしてなくね!」
そんな冗談を言って笑っている三人をよそに、私は一人空を見上げる。
そういろいろあった、本当に。
夏前特有の夕焼けは、確かに私の顔を赤くするには十分な熱気を放っている、けど…。
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