受け入れられるかはまた別の話
突然だが、俺の話をしよう。
生前の名前は
慕っていた姉の通っていた大学に行くために選んだ高校で自我を剥奪されて都合のいい駒にされた挙句姉をこの手で殺し、最期に自我を取り戻させてくれた姉の遺言を無視して復讐に走って報復を咎められて自身も討たれるなんてなかなかないだろう。我ながら本当に酷い人生だった。
そうして死んだと思った次の瞬間には知らない天井、知らない女の子、知らない体というわけだ。生前も
幸いにも今世にはそんなものはなく、至って平穏な世界のよう。事件事故はあれどそのどれもが人の営みの中で起こされた、極めて"普通”の案件だった。最もうちの姉だけは例外のようでいつ首を突っ込んでいくのかと気が気ではないのだが。
「こらー、お姉ちゃんのことそんな風に思ってたの? ひっどいなぁ」
「……だから思考を読むなって言ってるだろ、姉さん」
なぜか生前の記憶を持っているしなんなら俺の記憶の連続もこのひとが原因なのだろうとうっすら察する程度には強力な贈られ子のひとりだが、バレないように能力を使って楽をする癖は前から変わっていない。……そも贈られ子自体存在しない世界で変わらず力を振るえているのかは知らないが。
「まあまあ細かいことはいいじゃない。そんなことより晩御飯何食べたい? 作ってあげるよー」
「こないだ能力で横着して卵焼き焦がしたの忘れてないからな。……ハンバーグ」
まっかせなさーい、と腕まくりをして台所へ向かう姉さん。こうして何気ない日々を送っているとやはり思う。なんて幸せな夢だろうか、と。いつか地獄に落ちるであろう俺がこんな尊い夢をみていいのだろうか、と。
この体になってもうすぐ6年。後悔も郷愁も山ほど連れてきて、されどそれらをどうにかする術も思いつかないまま、ただただ家族に甘え続け、俺はずっと立ち止まったままだった。
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