Intermission 5

 女神は生まれ変わる――それはリソースが限られている以上、不可避だ。

《星》も、胚も、組み合わせが決まっている。イシュタルの星を操る者が死ねば、新たな操り手が必要になる。それも、イシュタルとまったく同じ遺伝情報を持つ存在によってしか肩代わりはできない。

 女神はみんなクローンだ。はじまりのアリーが第一世代、その遺伝情報をベースに、数多くのバリエーションが造られた、それが第二世代。

 イシュタルもシジフォスもそのバリエーションのひとつなのだという。だから、イシュタルのバイタルサインが衛星に届かなくなった時点で、ストックされていたクローン胚のひとつが育成を始めるのだ。

 シジフォスからそれを教わったおれは、サイスの町を出た。

 ためた金は戦車のチューン費に充て、使い切れなかった分は適当にバラまいた。

 それから、一人で、トーナメントや、賭け試合や、野盗狩りといった、腕を磨くための場所を巡った。名前もかえた。元ガンロードという経歴は、邪魔だったからだ。

 何年も、何年もそれを続けた。

 別に、あいつともう一度組もうと思ったからじゃない。

 それに、会えるはずがない。十何年もたって、広いオーストラリアで、ひょっこり顔を合わせるなんて、できるはずがない。

 第一、向こうはこっちのことを知らない。おれだって、十何年ものあいだ、うじうじ一人の女にこだわっていたりはしない。もっといい女と暮らしているか、あるいは戦いで死んでいるだろう――

 いずれにせよ、だ。もう、女神とは組まない。

 一人で戦う。そして、強くなってやる。

 もしも、百万にひとつ、十億のひとつの巡り合わせで、あいつと顔を合わせることがあったら、見せつけてやる。おれが、女神なしで、やれる男だってことを。もう、足手まといなんかじゃないってことを。

 何もできず、棺桶の内側で、惚れた女が光になるのを見過ごすようなことは――まっぴらごめんだ。

 だから、もしも、もう一度会えたら……

 もう一度……

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