Intermission 1

 戦車乗りになりたくてなったわけじゃない。

 むしろ大嫌いだった。戦車に乗った野盗どもに親を殺され、妹を奪われたあのときから、その気持ちは変わらない。

 だが、復讐のためには――妹を取りもどすためには――戦車乗りになるしかなかった。

 この大陸では、法とは力だ。それこそ砲がものを言う。支配者たるガンロードだって、野盗と皮一枚しか隔てていない。トーナメントによる平和的な権力委譲、なんてお笑い草だ。

 野盗どもはトーナメントのあるところに集まる。そこに多くのヒト、モノ、カネが集まるからだ。腕に覚えにあればガンロードになろうとするかもしれない。いずれにせよ、やつらの足取りを追うには、トーナメントを転戦するのが一番効率いい。

 だから、おれは戦車を手に入れ、大陸をかけずり回りはじめた。

 田舎の草試合ではそれなりだったおれも、トーナメントではさんざんだった。反則のような命中精度と回避能力、こてんぱんにやられた相手の戦車から降りてくるのは細っこい女。それが女神なんだと思い知らされた。

 だから、おれは女神も大嫌いなんだ。

 なのに、なぜ、と思うかもしれない。おれだって、そう思う。

 だが、最初会った時、おれはあいつが女神だなんてちっとも思わなかった。

 埃まみれで、ボロにくるまってて、ぶっきらぼうで、男みたいで――

「で、あんたはどうしたいのかな、フォースくん」

 目だけはやたら綺麗な真紅だったっけ。

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