夏の夢 作:亜鈴 ゆずさ

どうしてなんだろう


どうしてこんな世界なんだろう


淡いパステルの空色の世界は


すぐに灰色に染められてしまう


弱い世界




晴れだけでいいのに 春だけでいいのに


地球はまわり続けてしまう


光だけでいいのに 笑顔だけでいいのに


全てはうつろいでいく




絵本の中は青いゼリーのような原色の単調な夏


現実の中は温度の波を肌で味わう生々しい夏


埃っぽいカーテンを揺らす風がプリントを散らす


じわっと滲んだ涙を埃のせいにして


流れる汗を拭って命を感じた




「ねえ、君、プリント拾わないの?」




聞こえるはずのない声


見えるはずのない美しい黒髪


失われた彼女の姿


あ、そうか


これは




複雑な温暖化の世界で


ゼリーのような夏の夢をみた


泳げそうな 青い夏の夢

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