4 狂気に溺れた王国②
神さんは先に風呂から上がり浴場から出ていく。
さぁ、浴場は1人になったし、しばらくは湯船にでも浸かっていようかな。
梅雨黒 神か、かっこいい名前だなぁ・・・・・・ん?
「あ、あぁ!? 梅雨黒 神って日本人の名前じゃないか・・・・・・てことは神さんも」
それに気が付いた時、俺の足はもう動いていた。 すぐに追いかけたが神さんはもういない。
神さんの部屋は浴場から出るとすぐ見えるとこにある、けれどドアノブには既に札がかけられていた。
多分神さんは俺よりも早く気がついたんだろう。 俺が日本人で、転生者だということに。
寝ているとはいえ、マリンを置いて外へ行くのは気が引けるから、今日のところは部屋に戻ろう。
と追いかけるのを諦めたその瞬間、俺はフロントさんと目が合う。
フロントさんの視線はそのままやや下へと動く。
俺もその視線の先を見る。
「へ、へんったい!」
「うぉぁあ! ごめんなさーい!」
しまった・・・・・・勢いで全裸のまま浴場を飛び出してしまった。
急いで中へ戻ったら、体を流れる水滴を真っ白なタオルで拭い、おじさんから借りたこちらの世界の服を着た。
「おぉ凄い、意外と似合ってるな! ちょっと素朴なところもいい!」
ロッカールームの鏡に映る異世界版の俺の姿はなかなかイケている。
浴場を後にし、マリンの眠る部屋へ向かう。 ギシギシと音を鳴らす床はこの世界の雰囲気と相まってとても心地が良い。
さてと部屋に着いた、俺もそろそろ寝るとしよう。
俺は部屋に戻るなり、ベッドに体を横たわらせ、気がつけば眠りについていた。
翌日、俺たちは早々に買い物へと出かけ、必要なものを購入し郵便屋へ行く。
購入した物を村まで運ぶように手続きを済ませて、あとは村へ帰るだけ。
俺たちは、おじさんに心配させまいと用を済ませ、すぐに王都の出口へ向かう。
出口へはすぐに着いた。
おっと、そういえば門兵さんに声をかけなきゃ。
「こんにちはー」
「おぉ、お二人さんもう帰るのかい?」
「えぇ、用事は済んだので」
マリンは許可証を門兵に見せそう言った。
「緑くんちょっとここで待ってな」
そう言うと、城壁に埋められるように作られた部屋の中へと入っていき、ゴソゴソと何かを取り出している。
音が止むとすぐに門兵さんは戻ってきて、右手には薄い小さな板のようなものをもっている。
「緑ってまた珍しい名前だな、ほら、これで王都へはいつでも入れるぞ。 ただ、身体検査は毎回あるからなー。 あと出身地だけが探しても見当たらなかった、とりあえず手書きで書いておいた」
「お、ありがとうございます」
許可証を見ると、左側に顔写真が貼られており、右側に、
《氏名》
《能力》 敵と見なした者の数値、人数に比例した力を能力者本人が授かる。 他人に付与することは不可。
《出身》不明(日本)
《年齢》25
王都への出入り、ここに許可を印す。
と、記載されてあり、右下にはハンコが押されてある。
この許可証があれば面倒な手続き無しに王都へ入れるという事だ。
ここまで厳重なのは、前に何かあったからなのだろうか。
にしても臆病なクセに欲張りな王様か・・・・・・面を拝ませてもらいたいぜ。
俺たちは門を抜け、またあの長い道のりを歩く。
「今さら聞くのもなんだけど、村まで馬車とか出てないのか?」
「そういったのは王が許さないわ、自分が良ければそれでいいのよこの国の王は」
「そっかぁ・・・・・・」
俺は深いため息を1つついた。
それと、今度は山賊に捕まらないといいが・・・・・・
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