ラブコメ主人公は妹いがち
夏休みに入った。
日に日に暑さは増していき、世界から生物を放逐せんとするばかりだ。過去の人類は次世代を犠牲にして悦を得ていたのであれば、その皺寄せを受けるべきなのは彼らであり、我々も彼らを見習っても構わないと思うんだなぁ〜。なんて事を仰向けになりながら言う
主人公の姿が、縁側にあった。
右手には団扇、左手にはソーダアイスバー。開放された縁側は時折風洞の様に風が吹き込む。そして、自堕落な態度を取る主人公に近づく一つの影。気配を隠し、迫り来るその姿は獲物を狙う猛禽類の様であった。
「お兄ちゃ〜ん!」
カワセミが川魚を捕獲しているかと見間違えるような姿勢で主人公へダイブ。グハッ、そんな情け無い声を上げ体を痙攣させる。
「お兄ちゃん、そんな事しても無駄だよ。
お兄の心臓はちゃんと動いているもん!」僕の胸に埋めた顔を上げ、無邪気に笑顔を作る妹。僕が唯一心を開き、0センチのパーソナルスペースへの侵入を許した女子だ。因みに転校生と雰囲気が似てる様な気がするし、いつもワンピースを着ている。
「またいつもみたいに御隠居プレイしてたの?そんな風に枯れ切ったら社会に伐採されるよ?」
そして、皮肉のプロだ。
先程の皮肉は、ダムダム弾の様にに表皮を貫き、身体中をミミズの様に這いずり回る。
もちろん、クリティカルヒットだ。
「お兄ちゃんは悲しいぞ!妹が切れるナイフになってしまって...こんな風に育てた覚えは有りません!」
なんて親を模倣し嘆くと、
「お兄ちゃんは育てて無いよね?てか、こうなったのは、お兄ちゃんがあの友達を連れてくるからだよね?自業自得なの分かってて言ってるの?」
などと刺してくる。返す言葉が見当たらず口籠っていると、妹は僕から降り、立ち上がりながらこう尋ねて来た。
「そう言えばお兄ちゃん、彼女出来たんだよね?」
と、今更感満載の過積載で捕まりそうな事である。
「そうだけどそれがどうした?」
妹を下から見上げて答える。その時、縁側を疾風が走り抜けた。若葉を撒き散らし、布をはためかせる。そして僕の目線は、一点へと収束していった。
ガッ、そして暗転
「おっ...お兄のえっち!」
頬を紅潮させ、羞恥に震えた妹はどうやら僕の頭を蹴り飛ばしたらしい。
死んだかと思ったわ...
それはそうと、お兄呼びご馳走様です。
走り去って行くかに思えた妹は振り返りあたかも独り言の様に言った。
「バカお兄は、私が養うから彼女なんて作らなくてもいいのに...」と。
きっと僕はこの時この場所で、その発言の真意に気がつかなければならなかったのだろう。
それはそうと、濃い緑でした。何で?
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