地雷回避(?)

「そのぉ〜今年こそは花火、一緒に観ませんか?」と。


 この一言は、僕が渇望していたものでもあり且つ、忌避していたものだった。


(打ち合わせ通りなら、ここで奴が...)


 期待に胸を膨らませ、目線を左に向ける。


「あっ、そういやこの後部活だ。じゃなっ!」


 なんて胡散臭さ溢れる事を吐かしよる。

今日、終業式だぞ。部活なんて無いだろ...

チッ、と思わず舌打ちが漏れる。藁どころか、蜘蛛の糸にすらならない様な千鶴へ最後の希望を託そうと、おやつを強請るねだる犬の様な視線を幼馴染に向けようとして、空振りした。


なぬっ!


 そこに千鶴の姿はなく、紙切れ一枚。


『それは残像だ!(キリッ)』


 そして、廊下に響く足音。


(あいつら逃げやがったなぁ〜)


 廊下の窓から覗いていた雀が二羽、蛇でも見たかのごとく逃げる様に飛び去って行った。


「あの子達の事は関係ないでしょ♪それで花火大会、どうするの?」


 彼女が浮かべた妖艶な笑みは、かのモルガンすらも震え上がらせ、かのセミラミスをも忠臣にさせる物だと言っても過言では無かった。喉は既に渇き切り、鉄の香りを鼻腔に届け、手足はそれこそ、音叉の様に止まる事を忘れてしまった様だった。


 (ここで言葉が出せなくて、何が男だっ!)


「そ...そうだね。一緒に花火観に行こうか」


 棘だらけの仙人掌は、見事な華を咲かせ、


「もちろんっ!何処に行けばいいかな」


 来た、


 この質問は、誠と共に考えていた。3人でなくとも、彼は十分に文珠であった。少しの間を開けてからそっと、そして誇らしげに、バビロンが天を目指した様にまた、人差し指を天井へ向けた。


 そして、首を傾げた彼女へとこう言い放つ。


「ここの屋上だ」

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