第65話
風紀委員会とは、生徒会と双璧をなす学内の自治組織である。
生徒会は、初等部からの玲明生かつ一定以上の家格や財力を持つ名家の子息令嬢で構成されるが、風紀委員会は「外部生かつ優秀な能力者」だけで構成されているのだ。
玲明は、中等部から外部生の入学枠が一定数ある。
大抵、外部から入学してくるのは、成績や能力の優秀な推薦生達や、何らかの事情で初等部は別の場所へ通っていたお金持ちの子達らしいんだけどね。
そんな子達の中から、優秀な能力を持つ子が風紀委員会に抜擢されるというわけ。
ちなみに高等部も全く同様で、外部から成績や能力の優秀な生徒が多数進学してくるため、その子達の中からメンバーが選出される仕組みになっている。
なぜ風紀委員会を作るのか。
理由は簡単。
この世界に能力があるからだ。
生徒会メンバーからすると縁遠い話だが、この世界の学校においても、能力を悪用したいじめや事件、能力の暴発による事故が起こってしまうことが珍しくない。
そのような事態が校内で起きた時に、先生と共に鎮圧に向かうのが、風紀委員会というわけだ。さすがに、天下の玲明学園のセキュリティ下では、そこまで大っぴらな事件や事故はないけどね。
ちなみに初等部に風紀委員会はないので、何かあった時には先生と、中等部の風紀委員会や生徒会が飛んでくる。
俺は、そういった場面に出くわしたことはないけど、後処理まで終わった後、被害にあった生徒の怪我を治癒したことがある。
その時、風紀委員を初めて見たけれど、腕章をつけて、ピシッとしている様はとても格好良かった。惜しむらくは、生徒会の徽章をつけた俺に対して、親の仇でも見るような視線を向けてきていたところだろうか。
図らずも、両者の険悪さをこの目で間近で見ることになったのはいい機会だったと思う反面、本当に仲が悪いんだなとガッカリもした。
何でこんなに軋轢があるのか。
これ、大体生徒会のせいなんだよね。
生徒会は、見ての通り学内では特権階級を持っているから、学年が上がるにつれて横柄な態度になっていく子も多い。恣意的な行動をとって周りを困らせる奴もいれば、他の一般生徒を陰でいじめる不届者もいるそうだ。
対して風紀委員会は、問題行動をとる生徒は誰だろうと指導し、それを鎮圧することを目的とする組織である。
だから、相手が誰だろうと問題が起きれば出動して、事の解決にあたるのだけれど、生徒会が絡む案件は、大事にしたくない学園側によって揉み消されてしまうことがあるのだ。
俺からしても大変理不尽な話だと思うけど、そういったことがまかり通ってしまうのが、この学園における生徒会なのだ。
つまり、生徒会のせいで、風紀委員会は理念通りの活動が出来ないから、自然と当たりも強くなる。
生徒会は生徒会で、特権階級である自分達にも当たり前のように指導してくる風紀委員会が気に入らない。
そんな理由で、両者は古くから、その刀が錆びつくまで延々と鍔迫り合いを続けてきたという歴史があるのだ。
参っちゃうよ。
風紀委員会と敵対なんてしたくないんだけど、仲良くしようものなら味方から睨まれるという、にっちもさっちもいかない状況だ。
それが、来年から襲いかかってくるんです。どうやら、問題はバッドエンド回避だけではなかったみたいですね……。
今から胃が痛いよ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます