新しいバンドの発掘2-5 BEATALLICA

 BEATALLICAはアメリカのバンド。もともとは2001年にJaymz Lennfield(Vo)とKrk Hammetson(Gt)が冗談で結成したバンドで、名前も付いていなかったらしい。しかし、コンサートで配ったCDの内の1枚がDavid Dixonという人物の手に渡り、感動した彼は勝手に"BEATALLICA"と名付け、ウェブサイトを開いて楽曲を公開した。それがきっかけで、彼らは有名になってしまう。


 有名になってしまったことで著作権的な問題が持ち上がり、The Beatlesの楽曲の版権を持つSony Music Publishingが彼らを訴えようとする。

 それに助け舟を出したのは、METALLICAのドラマー、Lars Ulrichだった。彼はMETALLICAの顧問弁護士を仲介役に立ててソニーミュージックと調停を行い、結局両者はBEATALLICAの活動を黙認することになったそうである。



 結構有名なバンドのようだが、私はこのバンドの存在を知らなかった。その理由はおそらく、私がThe BeatlesもMETALLICAもそこまで好きじゃないからだろう。もちろん有名な曲はひととおり聴いたことがあるし、別に嫌いではない。ただ、積極的に聴くバンドではない。



 真野魚尾さんはもともとこのバントを紹介する気はなかったようで、ただ、超豪華メンバーが集まってThe Beatlesの"Abbey Road"をカバーするという企画盤、"Abbey Road Reimagined - A Tribute To The Beatles"を紹介するついでに、BEATALLICAの"Abbey Load"も紹介していただけだった。


 https://kakuyomu.jp/works/16817330650571948914/episodes/16817330662663776284

 (真野魚尾 「41. 注目の新作:8月号【プログレ/その他】IL CERCHIO D'ORO/IL BACIO DELLA MEDUSA/「アビー・ロード」「ランバダ」など」)


 しかし私はこともあろうに、本当に紹介したかった"Abbey Road Reimagined"ではなく、ついでに紹介した"Abbey Load"に反応してしまったのであった。


 ……いや、"Abbey Road Reimagined"も興味深い企画ではある。元Guns N' RosesのRon Bumblefoot Thal(Gt)や、YESに入ったり抜けたりしているRick Wakeman(Key)など、豪華なメンバーがそれぞれの曲をカバーしている。

 しかし、BEATALLICAのインパクトがあまりにも強すぎた。


 ところで、気づいていない人のために念を押しておく。BEATALLICAの方は"Abbey 「L」oad"である。これは誤字ではない。METALLICAの"LOAD"というアルバムと掛けてある。つまり、"Abbey Road"の曲と"LOAD"の曲が混ざっているわけである。



 私は"Abbey Load"を聴いて、なかなか面白いなと思ったが、今ひとつピンと来ないところもあった。というのは、私はMETALLICAの"LOAD"を聴いたことがなかったからである。元ネタがわからない。

 "LOAD"は一般的にはあまり評価の高くないアルバムで、METALLICAファンではない私は必聴盤ではないだろうという理由からスルーしている。

 Spotifyで聴くことはできるので、それで予習すればいいが、元ネタをきちんと理解するにはそれなりに聴き込む必要があり、すぐにできることではない。それに、私には聴くべき楽曲が今や大量にあり、その暇もない。


 というわけで、もっと元ネタの分かる曲はないんかねと思い、Spotifyで探したら、あった。



https://www.youtube.com/watch?v=C3BuQwmbeBE&list=OLAK5uy_m613gZJaONCNmSu__R43SFICbv7IV6X9c&index=2

(Oglio "Masterful Mystery Tour from Beatallica Masterful Mystery Tour")


 リンク先のチャンネル名義である"Oglio"というのはレーベル会社のようである。なので公式だろうと判断した。


 METALLICAの"Master of Pappets"とThe Beatlesの"Magical Mystery Tour"のキメラ。さすがにこの2曲は知っている人が多いだろう。ファンじゃない私でもわかるんだから。


 もちろんこれはふざけて作られたジョークソングなわけだが、意外とアレンジがうまい。ぜんぜん違うタイプの曲を2曲継ぎ接ぎして作られた曲のわりに、まともに聞こえる。

 ビートルズのメロディとメタリカのリフという組み合わせはかなり変だが、うまく補い合っているようでもある。ビートルズはお上品すぎるし、メタリカはメロディが弱いところがあるわけだが、それが組み合わさると、何か新しいサウンドが生まれてしまったような気がするのである。



 一方、難しいことはともかく、ひたすら笑える酷いカバーもある。

 まずは"Hey Jude"のカバー、"Hey Dude"。


https://www.youtube.com/watch?v=NO5w9P6w55A&list=OLAK5uy_modNKxQiduqVhoceN0S2ZDNOMyNfIxiEk&index=11

(BEATALLICA - topic "Hey Dude")


 "Dude"とは、男同士がくだけた感じで呼びかけるときに使う言葉。「お前」とか訳す。

 このタイトルからして笑い死にそうになるが、歌詞は断片的に聞き取れるだけでも酷い。


「ようお前、ゴミみたいな曲ばかり作ってるんじゃねえ、心の中にメタルがあることを忘れるな、そうすりゃお前はシュレッダー(速弾きギタリスト)になれるぜ」


 とか言っている。あとはなんか、ポーザー(バンド)の血が川に流れるとか、お前の彼女をぶん殴れとか、いろいろ酷い。

 名曲が台無しだが最高である。ビートルズファンは怒っていいと思うが、メタルファンなら狂喜乱舞するだろう。



 これも最高に酷い。"I Want to Hold Your Hand"のカバー、"I Want to Choke Your Band"。


https://www.youtube.com/watch?v=QaTjWqAT4QQ&list=OLAK5uy_m613gZJaONCNmSu__R43SFICbv7IV6X9c&index=11

(Oglio "I Want To Choke Your Band from Beatallica Masterful Mystery")


「君の手を握りたい」という、恥ずかしいくらい青臭い青春ソングが、酷いことに。

 これもタイトルからして酷い。「お前のバンドを絞めてやる」。


 見た目だけで中身のないバンドのことを「ポーザー・バンド」と言うのだが、そのポーザー・バンドを片っ端から絞め殺してやるという内容の歌詞である。グラムロックなんかクソだ! White Lionはとっくの昔にくたばったぜ! とか言っている。



 さて。私がこれを買わない理由はあるだろうか? 面白いし、単純にThe Beatlesのメタルカバーとして、よくできている。METALLICAの元ネタを知っているとより楽しめる。


 というわけで、1stアルバムの"Sgt.Hetfield's Motorbreath Pub Band"と2ndアルバムの"Masterful Mystery Tour"を購入した。



 ……私からは以上である。これも試聴したら、好きか嫌いかは一発でわかるタイプだろう。

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