CD棚を修理する

 CD棚が崩壊した。


 私は最近は、よく聴く曲はmp3化してパソコンやスマホに入れているので、CDで聴くことは滅多にない。ただ、少しmp3化していなかった曲で聴きたくなったのがあったので、それを取り出そうと久々にCD棚を漁っていると、突然棚板が外れてCDが雪崩を起こしそうになった。


 崩れた棚はA~Eの棚だったのだが、よりにもよってここは、私が最も入手に苦労した三大アルバムが揃い踏みしている棚だったりする。Anglagardの"Hibris"、Ethos"の"Ardour"、Evil Wingsの"Brightleaf"。知らない人はAmazonなどで検索してみよう。たぶん売り切れか、馬鹿げたレア値で出品している人がいるはずである。

 なんでよりにもよってこの棚なんだよ! と思ったが、よく考えたら別の棚でも大惨事には変わりないし、どこも崩れて欲しくはない。


 とにかく、片手で棚板を押さえて平行を維持しつつ、もう片方の手でちょっとずつ棚板に乗っていたCDを安全な場所に移すことで、なんとかCDの崩落は回避された。エアコンを点けていたにも関わらず、終わった後には汗だくである。



 棚板が外れた原因は、荷重や寒暖差や湿気によって側板が曲がり、棚の幅が広がりすぎたため。本来、この棚の内幅は55.5cmで、57.5cmまでなら棚板は棚受けで支えられる。その許容範囲を越えたために棚受けに棚板が乗らなくなり、しばらくは下の棚のCDがずり落ちた棚板を支えている状態だったようである。そのCDを抜いた時に支えがなくなって崩落したわけである。



 大惨事は防ぐことができたが、問題は今後のこと。棚を買い替えるのか、修理するのか。

 買い替えた方が簡単だが、どうせ捨てるなら、その前に修理を試みてもいい。修理に失敗したら買い替えればいい。

 というわけで、修理できないか検討することにした。



 棚の側板が広がるのを抑えるには、左右の外側から押し付けるか、あるいは内側から引っ張ってやればいい。もちろん、両手で抱えるようにして押さえれば矯正できるが、ずっとそうしているわけにはいかない。手を離してもその状態になるように、何かが必要なわけである。



 最初に考えたのは、棚の背面に補強用の板を噛ませてネジ留めすることだった。これは既製品の棚の構造としてもよく見かける手である。板と木ネジがあればできるから簡単。


 というわけで、当初はこの手で行く予定だったが、無加工で使える板がなく、板をのこぎりでカットする必要があった。

 しかし、それではさっそく作業しようかと思った矢先にいきなり天候が崩れて土砂降りになり、作業できなくなってしまった。


 晴れるのを待ちながら、他にもっと簡単な手はないか考えていると、ひとつ思いついた。可動式の棚板をネジ留めして固定する手である。


 よく考えてみれば、この可動式の棚板は動かす必要がない。CDしか置かないのだから、一度決めた高さから変えなくていい。だったら固定してしまえばいい。そうすれば棚板が補強板の役割を果たし、側板が広がるのを防ぐ。


 作業も簡単。側板には棚受けを挿すための穴が空いているので、それをドリルビットで貫通させ、そこから木ネジを差し込んで側板を固定すればいいだけ。

 この方法だと板の加工は必要ない。棚板をそのままネジ留めするだけでいい。ただ、棚板には棚受け用の穴が開いているため、ネジで留める際はそこを避けて、少し上めを狙う必要がある。そこだけちょっと面倒。


 側板を全部ネジ留めすればより安全だが、今のところ、そこまでする必要はないので、真ん中の1枚だけ固定する。これだけで論理上は充分のはずである。


 必要なものも揃っている。ドリルビットは電動のものを持っているし、木ネジは、最近ぼろぼろになった本棚を解体して捨てた際に、外したものを取っておいたのを流用できる。

 あとはやるだけである。



 作業に関しては特に言うこともなく、あっという間に完了した。ドリルビットさえあれば、組み立て式の棚を作ったことがある人なら楽勝である。


 デキは上々。ちゃんと棚の幅は元通りになった。これで当面は棚板が落ちることはなくなり、安心してCDを置けるようになった。もしまたズレてきたら、今度は棚板を全部ネジ留めするつもりである。


 ただ、背面の板が膨張しているらしく、棚のサイズを元通りに矯正した結果、まっすぐ納まらずに後ろに反り返るようになった。

 が、それは気にしない。どうしても邪魔なら背面の板を外して、代わりに養生シートを背面にダクトテープで貼り付けてもいい。背面の板はCDが裏に落ちるのを回避してくれればよく、そこまで重要ではない。



 CDや本には場所を取るという問題がある。また、結構な重みがあるので、棚が劣化して棚板や側板が曲がってきて、今回のような惨事を招くことがある。

 そういうこともあって、最近は電子書籍やMP3での購入も増えてきたが、こうした電子データはサービス終了で全滅するというリスクもあるので、本当なら物理的に所有していたいという気持ちもある。物理的なメディアも地震や火災によって全滅することはあるから、結局のところは同じだという考え方もあると思うが。

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