電源ユニットのコイル鳴き

 パソコンの電源ユニットからノイズが出るようになった。特定の低負荷時にジーという低周波音、高負荷時にはキーンという高周波音が出る。


 私は最初、ノイズの出どころは冷却ファンだと思っていた。今使っているファンはAmazonで激安で買ったファンなので、やっぱり安物はダメだったかと思った。

 しかし、「どのファンからノイズが出てるんだ?」と、ひとつずつ確認してみたが、どれも正常だった。

 CPU、ビデオカードも確認してみるが、それも違う。最後に残ったのが電源ユニットだった。



 こうした異音がする時、真っ先に疑われるのは電源ユニットだが、私がなぜ電源ユニットを最後まで疑わなかったかというと、この電源ユニットは以前のパソコンから移植したもので、その時は正常に稼働していたからである。


 今回、音が鳴るようになったのは、玄人志向のKRPW-BK750W/85+。買ってから2年になるが、もともと予備の電源として買ったもので、あまり使っていない。以前のパソコン、i7-3770とGTX1060搭載のやつで半年ほど使用したが、その時は特に鳴きはなかった。



 こうしたノイズは俗に「コイル鳴き」と言われる。コイルが原因のことが多いからだが、必ずしもノイズの原因がコイルとは限らない。電気と電気製品の部品の何かが共鳴して振動し、音が鳴るのが原因。

 物体にはそれぞれ固有振動があり、それと電気の周波数が一致すると共鳴して強く振動する。その際に音が鳴る。


 電気製品の基板には鳴き対策が施されており、グリスみたいなものを塗ったり、テープを巻いたりして振動を抑えている。その対策が甘かったり、経年劣化で効果が落ちてくると、コイル鳴きするわけである。


 あるいは、パーツを買い替えた際に、新しいパーツと古いパーツの相性で鳴き出すこともある。パソコンの場合、パソコンにかかる負荷が変わることで電気の周波数が変わり、今まで鳴かなかったパーツと共振して鳴き出す、ということがある。


 コイル鳴きの音は、壊れた冷却ファンの風切り音とも似ている。私が最初、冷却ファンが原因だと考えたのはそのため。

 異音の原因を特定するのは、時に厄介なことがある。簡単にわかりそうなものだが、そうでもない。



 コイル鳴きは液晶パネルのドット欠けと同じく、製品不良とみなされない場合が多い。購入直後に大きいノイズが出るようだったら交換してもらえるかもしれないが、基本的には保証対象にならないと考えた方がいい。



 コイル鳴きの対処法は、理屈としては簡単。何が鳴っているかを特定して、鳴らないようにすればいい。よく使われるのはホットグルーで振動している部品を基板に固定する手。ホットグルーやグルーガンは100円ショップでも売っている。

 これは、ろうそくのろうみたいなやつを熱で溶かして垂らし、冷えて固まることで接着するもの。非伝導性なので基板に付いても問題ない。ただし、熱で部品が壊れる可能性はあるから、そこは注意。


 問題は、それをやるには製品を分解しなければならないことと、原因を特定するのはそんなに簡単ではない、ということ。


 原因を特定するには、まずは製品を分解し、ざっと物理的な不具合がないか確認する。コンデンサが膨らんでいるなどの明らかな劣化が見られる場合、修理するだけ無駄なので買い換えた方がいい。


 見た目に問題がない場合は、基板に電気を流し、どのパーツが鳴っているのか耳で確認したり、非伝導性の素材のピンセットかなにかで摘まんでみたりすることになる。

 もちろんこれは感電の危険があるし、ショートさせるなどして製品に止めを刺すリスクもある。普通は推奨されない行為。しかし、DIYとはそういうもんである。


 ただ、勇気を振り絞ってそれをやったところで、結局原因がわからない、ということもままある。何が鳴っているかを特定するのが難しいことがある。

 コイルなどの大きなパーツが原因なら簡単だが、小さな部品が特定の周波数の時だけ鳴ることもあるし、電源ケーブルや、ケーブルに付属するフェライトコアが原因のこともある。



 KRPW-BK750W/85+はぎりぎり保証期間内だったが、経年劣化によるコイル鳴きが交換対象になるとは考え難かった。ダメモトで問い合わせても良かったが、時間がかかる。

 それよりは原因を特定してホットグルーで固めたほうがてっとり早いと考えた。


 というわけで、電源ユニットを分解してみる。分解自体は、パソコンを自作している人には難しくない。パソコン本体のケースを開ける作業とほぼ同じ。

 ただ、シリアルナンバーの書かれたシールの裏に隠しネジがあるので注意。もちろん、このシールを剥がすと保証対象外となる。


 ケースを開けたら、そのままパソコンに繋いで電源を入れる。そして、どのパーツが鳴っているか確認する。


 耳で確認した限りでは、どうやらトランスが原因らしい。原因がわかったのはいいが、重大な問題もわかった。ピンセットで押さえても鳴き止まないのである。

 つまり原因はトランスの中にあるパーツの振動で、外側のケースをいくら固定しても振動は止まらない、ということ。

 これで、私の力では修理は不可能ということがわかった。やりようはあるのかもしれないが、私の知識と技術では無理。



 こうなると買い換え決定だが、買い換えた電源ユニットが鳴かない保証はない。コイル鳴きする原因のひとつは、安物だから、つまり、防振対策が甘いからであり、対策がきちんとされている製品を買えば、多少は鳴き製品を掴まされる可能性は下がる。しかし、高級品でも鳴るときは鳴るもので、絶対鳴かない電気製品などない。高い電源ユニットを買って鳴いたら最悪である。こっちが泣きたい。

 そんなことをいちいち考えていたら電源ユニットなんか買えないが、コイル鳴きで悩まされた人は、しばしば疑心暗鬼に陥りがちである。



 そこで、まずは予備としてとっておいた、古い電源ユニットを引っ張り出してくることにした。玄人志向のKRPW-V2-600W。

 実はこれ、10年以上使用していた電源ユニットである。ただ、使っていたのはAthlon 2400 X2搭載のポンコツパソコンで、ほとんど負荷なんかかかっていなかった。おかげで未だに問題なく使えるため、予備電源としてキープしていたのである。


 取り付けて電源を入れてみると、やはり高負荷時には少し鳴っているのが確認された。こうなると、今のパソコンの構成と、玄人志向の電源ユニットとの相性が悪いのかもしれない。

 ただ、鳴きはかなり小さく、冷却ファンの音でかき消される程度のもの。実用上問題ないので、しばらくこのまま使うことにした。



 分解してしまい、保証対象外となったうるさいKRPW-BK750W/85+だが、うるさいだけで製品としては問題なく使えるので、予備電源としてとっておくことにした。

 パソコンが不調のとき、何が原因か特定するのが難しいことがままある。そのときに予備パーツがあると、原因特定に役立つ。電源ユニットを交換しても不具合がなくならないなら、電源ユニットが原因ではないことがわかるわけである。うるさくても、その役目を果たすには問題ない。

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