Fire HDをお風呂で使う

 少し前の話だが、サッカー・ワールドカップを観戦していた頃のこと。

 サッカー観戦はしたいけど、観戦していたらお風呂に入る時間がなくなって困るなあ、と思ったことがあった。

 私はW杯を全戦観戦したが、そうすると、毎日夜から朝までずっとサッカー観戦で拘束されることになる。試合の間に1時間程度のインターバルがあり、その時間に入ればいいのだが、様々な理由でそううまくいかないことが多い。

 試合が始まる前に入るのも無理。寝とかないといけない。W杯の間、私は晩飯を食わずに寝ていた。そうしないと持たない。


 私はW杯を全戦Abemaで観ていた。全戦放送していたのがAbemaしかなかったからだが、これはつまりFire HDから観戦ができるということであり、タブレット用防水ケースを買えば、お風呂でサッカー観戦できるんじゃないかと考えた。


 そこで、タブレット用の防水ケースを買ってみた。2000円くらいのビニール製のやつだが、機能は充分。スタンドも付いていたので、お風呂の蓋にスタンドを置いて設置すれば、簡易デスクの出来上がりである。



 かつて、お風呂でテレビを観るのは庶民の夢だった。テレビ電話と同じくらい夢の未来のハイテク技術だった。それがついに我が家でも実現したわけである。しかも、総額で2万円もしない装備で。


 これはとても感動的な瞬間ではあったが、実際やってみたら問題もあった。音漏れがすごい。

 どうやらお風呂にはあまり防音機能はないようである。風呂場の窓を閉めてFire HDで音楽を鳴らし、外に出て確認したら、結構な大きさで音が漏れていた。これは近所迷惑である。


 というわけで、ワイヤレス防水イヤホンを買ってみることにした。買ったのはAnkerのSoundcore Liberty Neo 2。これにした理由は、そこそこの値段で防水性能がIPX7なのがこれだけだったから。値段は6000円前後。ワイヤレスで防水なイヤホンなんてハイテク製品が1万円もせず買えるなんて驚きである。

 もっと驚きだったのが、音質が意外といいこと。値段が値段なので、多少スカスカな音なのも覚悟していたが、想像以上にまともな音を出していた。


 説明書には「お風呂で使うな」と書いてあった。蒸気が発生する状況での使用は想定されていないのだとか。しかし、そのために買ったんだし、壊れてもいいやということで使ってみた。何度か使ったが、今のところ無事。



 こうして、お風呂で動画を観たり音楽を聴いたりできる環境ができあがったわけだが、実際には、お風呂で動画や音楽を鑑賞するのは何かと制限がある。いちいちイヤホンを付けないといけないし、シャワーを使ったりすると音がかき消されて聞こえない。視聴中は水音を立てないよう、じっと湯船に浸かっているしかない。これは意外と不便である。


 それよりも便利だったのは、単純にFire HDでネットにアクセスできるということの方だった。

 お風呂に入っているときに「そういえば、あれってなんだっけ」などと調べものの案件が思い浮かぶことはよくある。今まではそれを覚えておいて、上がってから調べなければならなかったが、今ならその場ですぐ調べられる。



 さらにすごいのが、お風呂で電子書籍を読めること。風呂で本を読むのも庶民の夢のひとつである。

 もっとも、風呂で紙の本を読む人は昔からいるらしいが。絶対本がダメになるだろうに。風呂場に持ち込んでまで読みたいくらい本が好きな人が、本が湿気でヨレヨレになっても気にしないというのは何か矛盾がある気がする。

 それも、防水タブレットで読む電子書籍なら問題ない。風呂場は読書になかなか適している。


 本が音楽や動画と違うのは、いつでも読むのを中断できる、ということ。音楽や動画は一時停止しない限り再生され続けるし、そもそも頻繁に止めながら鑑賞するものでもない。Bメロに入る前に一旦止めて、髪を洗ってから続きを聴こうとか、そうやって聴くものじゃない。

 その点、本は融通が効く。どこで中断しても構わない。


 ただ、私はそんなに電子書籍を持っていない。「あの本、読みたいなあ」と思っても、それはたいがい紙の本だったりする。

 仕方なく、カクヨムにアクセスして自分の文章を読み、誤字脱字をチェックする。


 今までは作業が一段落してからお風呂に行こう、といった感じだったが、今だと「続きはお風呂でやるか」ができる。

 私の場合、「作業が一段落」した頃にはもう朝、ということがしょっちゅうある。その間にお風呂の湯は冷めて沸かし直しになる。これは無駄もいいところだった。

 作業の途中で湯が温かい内に入れるというのは、経済的にもメリットがある。



 Fire HDを買う前はちゃんと活用できるのか心配していたが、結局、ずいぶん役に立っている。ファミレスや喫茶店だけでなく、ついに風呂場でも作業できるようになった。中古で買ったときに付属していた専用キーボードも、キー配置が変なので使えるか心配だったが、もう慣れた。

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