クレープと飛び入り挑戦者

 というわけで年末の朝。私は急遽買うことになった牛乳と、それに合わせて急遽買ったパイナップルとバナナを使って、朝からクレープを作ることになった。


 材料は、小麦粉(薄力粉)100g、牛乳200ml、たまご1個。

 この生地はかなり水分多めなので、いきなり全部の材料をボールに入れて混ぜると、なかなかダマがなくならない。そこでまずは小麦粉100gに対して牛乳を半分だけいれて、硬めの生地を練り練りする。ちょっと硬すぎね? 練りにくくね? と思ったところでたまごをイン。すると一気に混ぜやすくなるぞ! そして最後に残った牛乳を入れて混ぜる。あとはフライパンに薄く油を敷いて生地を流し込んで弱火で焼くだけだ。

 この分量で24cmフライパンを使って生地を焼くと、だいたい4枚作れる。


 お好みで生地に味付けや香り付けをしてもいいが、私はやらない。どうせフルーツやチョコで甘くなるから、生地にまで砂糖を入れる必要はないと考えている。

 ただ、ココアの粉末を混ぜ込んだことはある。その場合はココア生地のクレープになる。当たり前だが。



 クレープ生地が焼けるのを待っている間に、すでに焼き上がったクレープの上にフルーツを乗せてチョコソースをかけて巻いてその場で食う。立ち食いクレープである。作り食いクレープか?

 もっとも、クレープはもともと歩きながら食べてもいいものなので、別に変ではない。


 そうやって、流れるようにクレープを作りながら盛り付けて巻いて食って、をやっていると、ふと、『ミスター味っ子』を思い出した。

 あの漫画には、クレープ焼きそばなるものが出てきたことがある。詳細は忘れたが、焼きそばをクレープ状に焼いて、その中に具材を入れるとか、そんな感じだったはず。クレープ生地に焼きそばを入れるわけではなかったはず。それだと粉ものが被る。


 しかし、その発想でお好み焼き風の料理を作ることはできそうである。つまり、クレープ生地の中にキャベツや豚バラを入れて巻いて食うという。

 ただ、もしそれをやるなら、生地に牛乳は入れない方がいいだろう。あと、小麦粉を減らして、たまごの風味を強めにした方がおいしそうである。


 考えていると試作してみたい気になってきたが、クレープ4枚のあとにさらにそれを食うのは朝からヘヴィである。それに、そう都合良く材料があるわけではない。キャベツは最近安かったから余分に買ってあるが、豚バラは買いに行かなきゃないし……



 ……と思ったが、実は冷凍庫にしゃぶしゃぶ用の豚バラが80gだけ残っているのを思い出した。半月前に焼豚丼を作るために買った物だが、1シートだけ余ったので冷凍し、使い途がないままだった。

 これは天命なのか……? このタイミングで豚バラが都合良く残っているということは、今こそ使えということなのだろうか……? なんとなく思いついたよくわからん食い物を作れという神の意志なのか……?


 天命なら仕方がないので、その、クレープ風お好み焼き風のなにかを試作することにした。



 生地の材料は、小麦粉50g、たまご1個、水100ml。あと、今回は白だしを少し味付けとして混ぜ込んだ。

 生地作りの手順は同じ。小麦粉を水半分で溶いてからたまごを入れて残りの水を入れて生地を作る。ただし今回は小麦粉が半分になっているので、かなりたまごの主張の強い生地となっている。


 具材は、1cm四方程度に切ったキャベツ適量、適当な大きさに切った豚バラ適量。クレープ状にして巻く関係上、豚バラは1枚丸ごとよりは、半分か4分の1くらいにカットした方がやりやすいだろう。今回の場合、豚バラは冷凍されてカチカチだったので、手で割って適当な大きさにした。手間いらずである。

 今回は簡易なので具材はこれだけだが、好みでもやしだの天かすだのを入れてもいいだろう。紅しょうがとか。

 あとはソースとかマヨネーズとか青のりとかかつお節とか。そこは自由。ソースとかがないようなら、生地のだし味を強めにし、最後に醤油をかければなんとかなるだろう。



 フライパンを2つ用意して、フライパンAで豚バラをさっと焼いて油を出す。と同時にフライパンBにキャベツと少量の水を入れて焼く。通常、お好み焼きのキャベツには蒸し焼きにする工程があるが、このクレープ風の何かではその工程がないので、ただ焼くとパサパサになる。ので、最初に差し水しておいた方がいいと思う。今回はやらなかったが、この時にフライパンBに蓋をしてもいいかもしれない。

 豚バラに焼き色が付いたらフライパンBに移してキャベツと一緒にする。フライパンAの油を利用して生地を焼くが、油が多すぎるならキッチンペーパーでさっと拭き取っておくといい。


 フライパンAを一旦、濡れ布巾の上に置いて適当に冷ましたら、生地を流して込んで弱火で焼く。焼けたら生地を皿に移し、フライパンBの具材を乗せ、ソースだのなんだのを好きにかけたら巻いて食う。以上。



 これが何か、と訊かれると、返答に困る。お好み焼きともクレープとも言えない何かである。たまご多めの生地はおやつ感覚だし、それと具材との相性は当然いい。基本的にはお好み焼きと同じ材料だから、合わないわけがない。

 また、前回作ったいか焼きの生地よりもあっさり風味になる。いか焼きの生地は小麦粉多めで、山芋や重曹を入れることで分厚くてもちもちしているが、こちらは小麦粉少なめで軽い。


 一食にするには軽すぎるかもしれないが、メインの一品としてはありかもしれない。ただ、フライパンを2つ使うから、同時に別の料理を作るのは難しい。



 ……しかし、朝から結構重たいものを食べることになってしまった。しかも、甘いフルーツクレープのデザートにお好み焼き風の粉ものである。さらに、フライパンを2つも使ったから、朝から洗い物が大変に。


 年末はディスカバリーチャンネルの宇宙番組とナショジオのエジプト遺跡発掘番組を観ながらごろごろだらだら過ごすはずだったのに、夕飯は冷凍の天ぷらそばで済ますはずだったのに、なんで朝からこんなことになるのか。そして、なんでこんなに切羽詰まった年の瀬に連続で雑記を書かにゃならんのか。それもこれも牛乳のせいである。

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