第12話 後悔青年 2
時間は一瞬で流れた。
いつもは来い来いって願っているが今日だけは昼休みを来るな来るなと思っていた。しかしその願いは通じずに昼休みになった。
実際、非部活動生の僕には後輩などと言う概念は無く。マジで後輩と接点が無いのだ。だから教室に行く事が非常に恐怖があった。
結果、僕は1年3組の教室天音さんの近くまで来て停止していた。
てかどんな目で見られるのかが怖い。
他のクラスに行く事があるなんて思いもしなかった。
でもな、天音さん待ってるだろうし。
深く息を吸った。
それに、教室に行けばいつもの天音さんの様子を見る事が出来るのではないか。
そうだよ。天才かも知れない…はぁ行くか。
「その、怜さんですよね。兄がいつもお世話になっています。春風 桜です。」
教室に行く途中で途中で立ち止まって考えている僕に後輩が話しかけて来た。
春風、兄、春風?
「えっ圭介の妹って事。」
そう僕は目の前にいる後輩に少し大きな声を出してしまった。
「はい、そうです。兄からは良く聞いてます。兄は変なので友達少ないので、友達をしてくださりありがとうございます。」
そう言う彼女の態度は妹と言うか保護者のそれだった。しかし、圭介が自慢したくなるのもわかるぐらいの整った顔立ちの人物だった。それでも圭介のそれは異常だとは思うが。しかし似てないなあんまり圭介と似てない。
「そんな、僕も圭介といると楽しいからね。それだけだよ。それにしても、あんまり圭介の方とは似てないんだね顔。」
そう僕が言うと彼女は
「似てないか…」
そう小声で少し暗く呟いた。何か気に触る事だったのだろうか?
しかし、その後すぐに普通の表情に戻って
「その怜さんは何か用事ですか?うちのクラス3組に。そこで少し困っているように見えたので」
そう尋ねて来た。ちょうど良かったかも知れない。
「その天音さんに用事があって、教室にいますかね?」
「ああ、なるほど。今いろいろと納得しました。いると思いますよ天音ちゃん、待ってますよ自分の席で」
そう彼女は僕の言葉を聞いて何かに納得したのか少し楽しそうに笑っていた。
「天音さんの席、分かんないんだけど。」
そう僕が言うと彼女は少し笑いながら
「教えません、まあ、今日はすぐに分かると思いますよ。それにこれ以上親切には出来ません。朝、兄をいじめたらしいじゃ無いですか。では、私はこれで、ああ頑張って下さい。」
そう言って何処かに去って行った。
兄はシスコンだったがどうやら妹はブラコンらしい。仲良し兄弟じゃん。
天音さんが待っているらしいので、教室に入りますか。そう思って天音さんの教室に向かって歩みを進めた。
妹さんが言っている意味はすぐに分かった。
1年3組には人集りが出来ていた。
その中心にいたのは天音さんであった。
天音さんの表情は冷たく冷え切っていた。
僕の知っている彼女の無表情よりも数段表情が無い。しかし、あの中に入るのか、頑張って、どうにか出来るかな?
「その、天音さん一緒に昼ごはん食べませんか?」
「いや、天音さんは俺と食べるんだ。」
「何を言ってるんだ。私と食べるんです天音さんは」
そんな声がいくつか飛びかっていた。
いつもこんな事に、なってるのだろうか?
その光景に天音さんは抑揚など一つも無い冷たい声で
「何度言えばわかるんですか?言いましたよね。人を待ってるって。」
そう言った。同一人物には見えない、距離感って言って物理的に距離をとった人と。
まあ、仕方がない頑張るか。
僕は覚悟を決めて深呼吸をした。
「天音さん、待ちましたか?」
僕がそう言うと彼女が笑顔で
「遅いです。怜さん。」
そう言った。今までの表情とは真逆だった。
それで僕は1年3組で、ものすごく注目を集める事になった。怨嗟の目がすごい…
「じゃあ、行きましょうか。」
僕はその怨嗟の目に耐えながら、声を震わしながらそう言って笑った。
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