第10話 登校前と婚約者 3
「怜さん、今日は私が弁当を作ったので、一緒にお昼食べませんか?」
天音さんが家を出る前に玄関でそう言った。
それで僕は立ち止まって、手作り弁当だ、嬉しいな。
「もちろん、めちゃくちゃ嬉しいよ。最高。良い奥さんになるよ」
そう僕がほとんど脊髄反射で言うと彼女は顔を赤くして目を丸くした。
「怜さん、なんかためらいが消えたって言うか、その恥ずかしげもなくすぐ言葉が出て来るようになったと言うか。」
「うん?」
「えっと、なんかその一切のためらいなく真顔でそんな事を言われると嬉しいですけど、それ以上に恥ずかしいって言うか。」
そう言って彼女は一呼吸置いて更に言葉を続けた。
「その今まで怜さんは言葉を選んで丁寧に発言している感じがあったのですけど、今はなんと言うか何も考えていないって言うか。勢いで発言しているって言うか。どうかしたんですか?」
顔を赤くながら彼女はそう言った。
あっ可愛い。
「戸惑ってる姿も可愛いんだね、天音さんは。僕は考えることをやめただけだよ。思った事を言う事にしたんだ。」
そう脊髄で答えた。
考えるな感じろって事だ。
「って事は、それは怜さんが今言ってる事は、本心って事ですか?その、えっと、えっとあの…」
彼女は真っ赤になってフリーズした。
その彼女がフリーズした理由を考えずに、僕は脊髄で話を続けた。
思考など要らないのだ。
「天音さん大丈夫ですか?顔真っ赤にして固まってますけど?可愛いですね。僕にこんな婚約者がいるなんてもったいないぐらいだよ。可愛い。」
「あわっあわあ…」
そんな風に更に赤くなっていく天音さんに対して僕はさらに言葉を続けた
「本当に可愛いね。それでお弁当は何処で食べるですか?」
彼女はその言葉を聞いて深呼吸をして、、
それから少し僕の目を見て、
反撃と言わんばかりに言葉を発した。
「そそそれなら、中庭で一緒に食べましょ。中庭で食べるとみんなから…見られてしまうかも知れませんね。でも、どうしても恥ずかしいって言うなら、違う場所も考えてあげますよ。」
そう彼女はこちらを見て顔をリンゴくらい赤くして言った。
「確かに、中庭は恥ずかしいけど、でも天音さんが中庭が良いなら僕は中庭で良いですよ。」
そう僕は何も考えずに率直に思った事を答えた。
「えっ、中庭は……」
彼女はそう言ってから一呼吸おいて
「じゃ、じゃあ昼休み私の教室まで迎えに来て下さい。」
そう更に顔を赤くして彼女は言葉を発した。
「うん、良いよ。何組だったけ?」
彼女は僕の即時の返答を聞いて彼女は一度固まった。それから再起動をして
「えっと、3組です。」
そう言った。
それから顔を真っ赤にして僕の目の前に立って、
「これからは絶対に考えて発言して下さい。じゃないと私、恥ずかしさと嬉しさで軽く死んでしまいます。」
そう言って少し上目遣いで僕のことを頬を膨らましながら睨んだ。
「うん、分かったよ」
そう彼女の圧に負けて、そう答えていた。
「あと、今日は別、別に登校しましょ。私この状態で一緒に登校したら、途中で多分心臓が破裂します。だから、先に行って下さい。」
そう言って彼女は僕を玄関から押し出した。
それから真っ赤な顔で彼女は、
「いってらっしゃい、怜さん。」
そう小さく手を振りながらそう言った。
どうやら登校は昨日までと同様に一人らしい。
「いってきます。やっぱり新婚みたいだね。」
そう僕が答えると彼女の
「だから怜さん、考えて発言して下さい。」
って言う今までで1番感情のこもっていたかも知れない言葉が聞けた。
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