第8話 登校前と婚約者 1
目を覚ますと僕の少しボヤけた視界に婚約者の天音さんの姿が映った。
彼女は僕の顔をを覗き込んでいた。
えっと、一旦状況を整理しよう。
確かあの後は、ハグの後は恥ずかしくて、無言になってしまった。
何かポカポカ、ふあふあと言うか不思議な感じだった。
その後は心ここに在らずだった。
朝になって目を覚ました。
そして今、婚約者と目があった。
彼女はただ真っ直ぐこちらを見ていた。
彼女の目と表情から全く感情を読み取ることが出来なかった。この顔は多分、怒ってるとかでは無いはずだ。
あっ、そう言えばまだ天音さん髪を結んでないな、新鮮だな。
「おはようございます」
「おはようございいます。怜さん」
そう言って彼女は少し笑みを浮かべた。
朝からこんな笑顔を見れるなんて、明日僕は死んでしまうのかも知れない。
そんな事を思っていると彼女は、挨拶以外は何も言わずに、僕の部屋から出て行こうとした。
そう言えば、なんで彼女はここにいたのだろうか。何か用事だったのだろうか?
「えっと、天音さんどうかしたんですか?」
そう僕が言うと彼女は立ち止まって、振り返り、こっちを見た。
「えっと、はい。朝ごはん出来たので、一緒に食べたいです。」
そう彼女は少し頬を赤くしてそう言った。
朝ごはん作ってくれたんだ。
うれしいな、朝ごはんか。
「なんか、」
なんか新婚みたいだなって言いかけてしまった。危ない。ああ、その思考が巡っただけで、やばい、恥ずかしい。
顔が熱くなっていき、耳が死ぬほど熱くなるのが分かった。
彼女はその僕の様子を見て、首を傾げた。それから少し無言で彼女は携帯を構えた。
パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、シャシャシャシャ
そんなけたたましくなるシャッター音
めちゃくちゃ写真を撮られた。
「天音さん、ちょっと、恥ずかしい、写真撮らないで、新婚って言うのは」
そう僕がテンパって言うと彼女は、目を見開いた。
「えっ、そうですね。新婚みたいですね。」
少し余裕そうに彼女は答えた。
その言葉で更に僕の体温が上がった。
おかしい、昨日の彼女なら僕と同じように顔を真っ赤にしているはずなのに今日は何故か、少し余裕がある?なんか、悲しい。
それから、彼女は少し笑顔で更に
「これからは新婚さんみたいに毎日起こしに来ますね。早く一緒に朝ごはんを食べましょう。」
そう言って僕を殺しにかかった。
僕の顔は更に真っ赤になったが彼女の顔が赤くなる事は無かった。
そして彼女は僕の部屋から出るためにドアの方向を向いた。
僕は何か悔しくて、それで
「髪を結んでる天音さんも良いけど、結んでない天音さんもいいね」
そう言うと彼女は、
「あっ」と言ってそれから彼女は、髪を後ろで束ねながら歩き出した。
しかし、そこで僕は気がついたのだ、彼女の耳が真っ赤になっている事に。
なんか安心した。
彼女が部屋から出て行った後、携帯に一通の連絡が来ている事に気がついた。
それは昨日電話があった徹からで
「ちょっと、後輩くんが良い子過ぎて、泣きそうなんだけど。」
そう来た連絡に対して僕は
「ちょっと婚約者が可愛すぎて、死にそうなんだけど。」
そう返信した。
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