第7話 距離感が0か100の天音さん 3
「ごめん…距離感の練習とか言ったけど、実は僕も良く分かって無いんだよね。」
「そうでしたか。」
そう僕が言うと彼女はスンとした表情になった
全くどう言う感情かが分かんない。
そう言えば、普段、彼女はどんな距離感でどんな表情で喋ってるのだろうか?
あっ…
「えっと、練習は分かんないけど、もしかしたらって方法ならあるんだけどやって見る?」
そう僕が言うと彼女はコクリと頷いた。
「えっと今から言う時の表情と返答をして見てくれないかな?」
そう僕は彼女に告げた。
婚約者の距離感など正直分かんない。多分友達とか家族との距離感を参考にすれば良いはずだ。
「じゃあ、友達に声をかけられた時」
そう僕が言うと彼女は、少し表情を崩して
「はい、どうかしましたか?」
と答えた。可愛かった。このくらいの距離感が良い気がする。
「じゃあ次は、家族に声をかけられた時は?」
そう僕が言うと彼女は更に表情を崩して可愛らしい笑顔を浮かべた。
「はい、どうかしましたか?」
それからそう答えた。このくらいでも良いかな?そんな事を思いつつも、更に言葉を続けた。
「じゃあ、顔見知りのクラスメイトは?」
そう僕が言うと彼女は固まった。
そして首を可愛らしく横に傾けて
「その、怜さん?これはやる必要ってありますか?クラスメイトって距離感遠い感じがするの私でも分かります。」
そう言った。
その通りだった。
でも…どうせならどんな感じか見てみたい。
好奇心が圧勝した。
「まあ、そうだけど。ちょっと、どんな感じか見てみたいなって思って…」
そう僕が緊張気味に少し声を振るわせて言うと彼女は少し考えて、
それから少しいたずらっぽい笑みを浮かべて
「今度私の様子を、私のクラスまで見に来れば分かります。だから教えません。」
そう言った。それから彼女の顔が少しずつ赤くなっていった。
……まあそれもそうかも知れない。
でも後輩がいる教室に行くの、怖いな。
「うん、分かった。そうする事にするよ。それと距離感は友達ぐらいから始めませんか?」
彼女の言葉にそう答えた。
流石に距離が近すぎると僕の心臓が持たない。
すると彼女は少し何か言いたげにこっちを見た。彼女はただ何も言わずにその綺麗な目でこっちを見ていた。
「えっと、天音さん、何か言いたい事がありますか?」
そう言うと彼女は顔を真っ赤にしながらこっちに近づいて来た。それから声を振るわせながら、言葉を発した。
「その、距離感は分かりました。緊張して距離をとりすぎず、テンパって近付き過ぎないで、友達ぐらいを保てるようにします…」
彼女はそう言葉を絞り出した。
それから彼女は更に顔を赤くした。それから深呼吸をしていた。
「そのでも、婚約者っぽい事もしたいので、」
彼女はそう言うと言葉を詰まらせた。
「婚約者っぽい事ですか?」
「はい。その、1日1回、そのハグをしませんか?」
そう言って彼女は手を広げた。
この状態は正面からハグ、、正面からハグ
えっ、死ぬよ。でも天音さんはこんなに顔を真っ赤にしていた。ハグが大丈夫なら何故距離感を掴んだり普通に話すのが無理なのだろうか?
「…分かったよ、」
僕も顔が熱くなっていくのが分かった。
心臓の高鳴りが伝わったらどうしよう。
そう思いつつ、僕は勇気を持って彼女をハグした。
彼女の顔が見えないが彼女の体温と匂いと早くなった心臓の音が伝わった。
僕の心臓は破裂する事は無かったが、止まったかも知れない。
恥ずかしさでハグは5秒も続かなかったがその5秒が永遠に思えた。
上がりきった体温の中、彼女は、真っ赤な顔で
「心臓のドキドキお揃いですね。」
そう言った言葉で僕の体温は更に上がった。
その後は、恥ずかしさで二人とも言葉を出す事は出来なかったが、それはそれで心地よい不思議な感じであった。
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