第5話 距離感が0か100の天音さん 1

急に天音さんがめちゃくちゃ近くに座って来た。少し状況を整理しよう。


えっと、あれから彼女の荷物が届いた。

今日は時間が無いから夜ご飯、ピザでも頼もうかって僕が言った。

そしたら、涼しげな表情だけど、ガッツポーズしている彼女を可愛いなって思った。

それで、その後、ピザのチーズに意外にも苦戦して、ピザを睨んでる彼女を見て彼女を見て可愛いって思った。


そんな彼女は今、無言で、僕の隣に座っている。


僕との幅は2センチぐらいで絶妙に触れないぐらいの距離で座ってる。

てか3人は座れるソファーをめっちゃ詰めて座っている今の状況は何なのだろうか?


隣から、良い匂いするよ。

何か変態みたいな事を思ってしまった。


彼女の表情を見ると、

彼女はいつもよく見る涼しげな表情をしていた。分かんない?これは、どう言うことだ?どんな感情だ?

試されてるのか?


「えっと、その天音さん、距離近すぎじゃ無いですか?」


そう僕が言うと、彼女はこっちを見て、

「ご、ごめんなさい。嫌でしたよね…」

そう言って涼しげな顔が悲しげな顔に変わった。あっ…致命的なミスをしたらしい。


「違うよ、その嫌では無いよ、むしろ、ちょっと嬉しいけど。でも、恥ずかしいって言うか、いきなり距離が100だったのが0って言うのは、ちょっとね、心臓に悪いから、だから一旦50くらいでね。ちょっと距離を取ろうか…」

そう僕が凄まじい早口で言うと彼女はしばらく考えてコクっと頷いた。

それから立ち上がり、僕から距離をとって、隣の部屋に行った。


……うん?あれ?怒った?

「このくらいで良いですか?怜さん?」

そう隣の部屋から先ほど異なりあまり感情が籠っていないように思える、無機質な声が聞こえてきた。


えっと、怒ったのかな?

「ごめん、本当に嫌とかじゃ無くて、ごめん怒ったよね。」

僕がそう言って隣の部屋に向かうと彼女は僕の対角線状の位置に動いた。


僕が彼女に一歩近づくと彼女は一歩僕から離れた。

「怜さん、私は怒っていませんよ。それと、近づかないで下さい、距離が近くなります。そしたら距離感が……」

そう彼女は真剣な顔で言った。ただの天然だった。


「その、天音さん物理的な距離も、全く関係ない訳じゃないんですけど。でも、そう言う事じゃ無くて。」


「??」

彼女は首を傾げていた。


「もう座る距離はさっきと同じぐらいでいいから。せめて何か話してくれませんか?無言は、流石にまだ天音さんが何を思ってるのかわからないので、耐えれないので。だから本当に、せめて何か話してくれませんか?」

そう僕が言うと彼女は自分の行動がずれていた事に気がつき、顔を真っ赤にした。


「その、そう言う事だったんですね。でも、無理です。自分から喋るのやっぱり恥ずかしいです。」

彼女は少し赤くなった顔を隠しながらそう言った。


「でも、さっきは吹っ切れたって、」

そう僕が言うと


「あれは、あれは忘れて下さい。勢いって言うか、その一緒に住むって事も全部、怜さんに捨てられるって思ってたから。だからもう勢いと焦りで、しただけででも、でも冷静になったら、恥ずかしくて…」

そう彼女は顔を耳まで真っ赤にしていた。

こっちまで、恥ずかしくなる。

彼女は真っ赤の顔のまま続けた。


「でも、それで遠くにいたら、また怜さんが嫌われたって思うかなって。だから、せめて近くにいようって思って。」

えっ、可愛い…


「その、じゃああれだね。距離感の練習しようか。」

気がつけばそんな事を口走っていたが、それにしても距離感の練習ってなんだ?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る