第3話 転校初日

今日は7月6日。


俺は、佐倉市立桜ケ丘中学校の生徒となる。


本当は親と行かなければいけないのだろうが、親は仕事だ。


緊張しながらも俺は桜ケ丘に行く。


今の時刻は8時30分。


夏の暑さが邪魔をしてくるが、1年6組の前に向かう。


廊下は静かで、朝の会の最中のようだ。


「入ってこーい」


担任がドアを開けて言う。

俺は緊張感を持ちながら中に入る。


「自己紹介をどうぞ」


「……東京の千代田区から来ました、佐倉和樹です。

是非、仲良くしてください」


俺は緊張しながらも噛むことはせずに自己紹介をした。

教室には朝とは思えないほどの拍手が飛び交う。

別にいい気分にはなってない。


「席、窓側の1番後ろね」


俺の席はそこになった。


俺的にはそれが今日で1番嬉しいことだと感じる。

隣には誰もいなくて、窓に最も近い席。

なんでそれが幸福に感じるのかと言うと、景色を眺めていられるからだ。

千代田区にいた時もそれが嬉しかった。

でも今の方が数倍嬉しい。

そりゃあ、千代田も綺麗だけれど佐倉がもっと綺麗かもしれないから。


朝の会が終わりを迎えて、休み時間になった。

別に転校生が来たからと言ってそんなに注目などされない。

そんな俺の元に一人の子が近づいて来た。

その子は藍音だ。


「無事に桜ケ丘まで来れたんだね、和樹」


「ああ、今度はね。

家から近かった事が分かって、損したさ」


「別に良かったじゃん、少しは慣れたでしょ?」


「全然、佐倉市めっちゃ広いから藍音教えて」


俺は藍音にそう言った。

藍音にそう頼んだのは、俺的に頼れるから。


「夏休みに行こうか」


「おう」


藍音はそう了承してくれた。


「今日は、5時間目までだよ」


「やったぜ、6時間授業は大嫌いだからな。俺は5時間の方が好きだ」


「短い方が部活ができるわね。 和樹は何部だったの?」


「俺は、剣道部だったぞ。 少なくとも経験者ではある」


「私と一緒じゃないの」


「部活も一緒か、宜しくな」


「よろしくね」


こんな他愛もない会話をして俺らは5時間目まで授業を受けた。

放課後に俺と藍音は暇なので、残っていた。

すると、2人の男女が来る。


「初めまして、佐倉君だっけ?」


綺麗な身なりの女の子が話しかけてくる。


「うん、そうだけど、貴女の名前は…?」


「私の名前は、志津しづ さくら、宜しくね」


「宜しくね、桜さん」


俺は出会ったばかりで呼び捨てで呼ぶのは馴れ馴れしいと思って、

さんをつけて呼んだ。


「クラスの皆に桜って呼ばれてるから、呼び捨てでいいよ」


「分かった」


「私も呼び捨てでいいかな?」


「良いよ」


「俺も自己紹介していい…?」


桜の隣にいたもう1人の男の子がそう言う。


「良いって言うか、しなきゃ和樹が困るよ」


藍音がそう言った。


「俺の名前は鈴木悠希すずきゆうき、呼び捨てで呼んでいいからね。

俺も呼び捨てでいいかな?」


「良いよ、俺も仲良くなりたいし」


「あのさ、和樹は何部に入るの?」


桜にそう聞かれる。

桜には話してなかったから仕方ないな。


「剣道部だよ」


「じゃあ全員剣道部だ」


「仲良くなれて、嬉しいなあ」


桜がそう話した後で、扉が開く。


「おーい、早く帰れ〜」


声の主は担任だったようで、俺らは帰った。


これからどうなるんだ…?









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