第80話 知矢の秘密 ~「トーヤ君は神聖教国の司教様?」
「「「えーっ!年上!!」」」
声をかけられ振り向くとそこにいた少女。いやよく見るともう少女は卒業し女性と呼ばれる年齢のにも見える。
女性は歳の頃はマリエッタと変わらぬ様子だがその低い身長とキリットした顔つきだがどことなくあどけない様子が余計若く見えるのだろう。
だが話を聞いていく内に彼女から「私の聞き及ぶところ、私はスコワールド様より一つ年上であったと記憶しています」
と衝撃的な発言で三人は思わず大声を上げてしまった。
「えっ、いえ失礼しました。とてもお若く感じた物ですから」慌ててニーナが失礼を詫びるがその女性は淡々と
「いえ、問題ありません。いつもの事ですから。確かにこの身長と幼い顔つきでは致し方ありません。」
「「「あはははは・・・・」」」
三人は言葉も無かった。
「そんな事より、塚田様。貴方にお聞きしたい事が有りお声がけさせて頂きました。」
全く動じない様子で改めて知矢へ声をかけるが
「いや、悪い、その前に確認させてくれ。俺の事を知っているみたいだが済まない、俺は失念しているようだ。どこの何方だったか先に教えてくれないか。」
女性はああと思い出したように呟くと自己紹介を始めた。
「大変失礼しました。私、先日塚田様がアンコール伯爵様と同席しマリエッタ様と試合をされた場に呼ばれましたアンコール家お抱えにして頂いております魔導士のモンゴミリアと申します。以後お見知りおきを。」
と丁寧に頭を下げるのだった。
「あっ!いや済まない。あの時の大魔導士の先生だったか。あの時は色々助かった。いや言い訳になるが装いが全く違っていたしあの時はマリエッタの奴に注意が向いていたものでな。」
やっとあの時の光景を思い出した知矢は慌てて言い訳をするが、確かにあの時は魔法使い然とした服装で大きなつばの帽子をかぶり杖を片手に服装はマントであったのだから致し方ない。
「いえお気になさらず、私もあの時は挨拶を交わす場でもありませんでしたし知らなくて当然です。
それに今日もこの様な装いをさせられましたが自分でもなれない姿に戸惑っております。」
と両手を開き肩をすくませるように自分の姿が滑稽であるかわかっていると言っているようだ。
一般的に観ればモンゴミリアの装いはシック装いのドレスであり年頃の女性なら似合っているはずだが如何せん背が低くいささか童顔の彼女にはまるで背伸びして無理をする少女の様に見えてしまう。
それが本人も解っているのだろうが自分の雇い主であるアンコール伯爵よりパーティーへの列席を促された時いつもの魔法使いの姿で出席しようとすると伯爵付きの侍女たちに囲まれ強制的に身ぐるみはがされドレスに着替えさせられたのであるから言わば彼女は被害者と言うべきかもしれない。
そんな裏の事情を知らない知矢は何とも言えない顔をし話を変えるのだった。
「・・いや中々可愛いと思うがゴホンゴホン・・・・いや失礼、で俺に何か用かい?」
ごまかし方の下手な知矢である。
「はい、いくつかあるのですが根本的な話は後にします。先に今巷でも貴族の間でも話題の魔道具商店の主は塚田様と伯爵様よりお聞きしました。その上でお伺いします。あの魔道具たち、私には全く発動条件や魔道具の構成が解析できませんでした。あれはどこの魔法なのでしょう、差支えなければお教えいただきたく。
そしてさらにこれが主たる話なのですが塚田様の発する魔法、あれは所謂私たちが使う魔法と全く波動が異なるように感じます。まるでそう、あの波動は”神聖魔法”の波動の様に感じました」
「「神聖魔法?」」知矢とニーナは同時に声を上げた。
「ハイ、東の大森林を越えさらに遠く山々を越えた先にあるさらに険しい山の中腹にあると言われる最高神を崇める宗教国家”イラ・カリット・ドゥ教国、通称-神聖教国”です。
一般の者では一生行く事の無い遠い地。神々の頂きと呼ばれる高い山々を仰ぎ見る地にある国家です。
その宗教国家において高位の司祭や高司祭、司教が使う癒しの魔法や破邪の魔法を何度か見る機会を得ましたがその時感じた波動、今でも思い出すと震えがくるような研ぎ澄まされたあの感じ。それが塚田様から感じられたのです。」
いきなり現れて知矢の転移を主導した最高神の名を出したモンゴミリアに知矢はどう対応していいか考えあぐねていた。
勿論転移者である話は出来るはずも無く波動と言われてもその自覚も無く、まさか最高神様に魔法を使えるようにしてもらいましたとは言えない知矢であった。
「えっだが俺は君の前で魔法を使った事は無いはずだが」と思い付きで茶を濁そうとするが
「ええ、最初は魔道具の事をお伺いしたく塚田様を探しておりましたが姿が見えず、しかし急に会場の外から感じた事の無い魔法の力を感じたので何か危険な者でこの会場に侵入しようとしているのかと思い周囲に探知の結界を張らせて頂きました。
するとその結界に塚田様が掛かり存在を確知できたのです。
なぜ気配遮断の魔法など使って会場入りを?」
知矢は大失態を犯したようだ。
気配遮断で客の注意から逃れるはずが逆にモンゴミリアに知矢の魔法魔力の特異性を見せてしまったのだから。
「・・・」知矢は更に言いよどむ。すると
「お嬢さん、俺は冒険者ギルドのギルド長を務めているガインって者だ。以後よろしくな」
と後ろで話を聞いていたガインが話に加わってきた。
「お嬢さん、こいつはね目立ったり、人前に晒されるのが大の苦手なんですよ」と笑いをこらえる様にモンゴミリアへ教えるのだった。
「えっそれで気配を絶っているのですか?
しかし、魔鉱石の発見者として注目されたり、あのような魔道具を販売したり。聞くところによると冒険者としても近年まれに見る功績を次から次へと上げているとお伺いしてますが」
そう、モンゴミリアのご指摘の通りである。
そもそも知矢はひっそりとした生活。”のんびり老後”を過ごそうとしていたはずである。
だがいざ何か行動をすると、
魔法でお湯を沸かそうとして”ファイヤーボール”で井戸を爆発させたり
冒険者登録をしようとして他の冒険者と試合をし叩きのめし、
魔法の練習をしようとして両手に別系統の魔法を同時しようとしたり
その後魔力量が膨大であるのを察知されたり、
初の冒険者として依頼を受ければ襲い掛かる多勢を返り討ちにし更に魔鉱石の鉱脈を発見し、
隠遁生活をするつもりなのにで大勢奴隷を狩って商売を始めたり
隠している力を気取られて大変困難な指名依頼を受けしかも無事解決し
希少な魔道具を発売して市民や商家、貴族の注目を浴び
襲ってきた第2ギルドの一派を壊滅、捕縛して
騎士団と揉めて伯爵に謁見しその娘と騎士団の目の前で戦うしかもその後その娘を配下に置く
魔獣討伐に行けばであったならば死が待ち受けていると言われるほどの魔獣を大人しく大森林へ返し
冒険者から恐れられている魔物”ゴールデン・デス・スパイダー”を従魔にし肩に乗せて都市を徘徊する。
等、とても隠遁生活や目立たない暮らしとは実際かけ離れていたのだった。
本人は目立たない様色々考えて行動していたつもりなのだが結果が真逆になっている、だが知矢は気づいていなかった。
「そう、本人はどう思っているかわからんがとても目立ちたくない奴の行動とは思えんほど活発に、しかもその行動の結果が大功績となりゃあ目立たない訳がないよな」とさらに笑いをこらえながら説明するガインであった。
そんなガインを横目に言葉の無い知矢はこの場をどう乗り切ろうかそれを必死に考えているのだった。
(作者も今必死に考えているところだった)
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