第4話失敗は成功の基 ~ 死人は出ないでしょう



夕食後一度部屋に戻った知矢は先ほど考えていた今後の事をまた考え出す。



「仕事ね~どこかで雇われると自由は無くなるし多分下働きだと賃金が安いから隠れ蓑にもならないしな。



俺の出来る事?手っ取り早いのは定番の冒険者だがまだ獣や魔獣・魔物も観たことないから正直怖い。



一発で即死なんて嫌だし(もう一回体験してるから勘弁だ)、採取なんてやったことないし・・・」



知矢にこの世界での知識があまりにも少ないので方針が定まらないが実は”指南書”にもその辺りの情報は記載されていたが指南書自体を使い慣れないのと自身の思考の中に留まって考えが広がらない。




「PCやスマホが有ればな~そんな異世界転生の話もあったっけ。あれは便利だ、けど無い物はしょうがない明日から地道に街を観察して情報収集してみるかな。一応冒険者登録もするか、身分証にもなるからな」



と明日の方針は決まったので後はと考え魔法の鍛錬・訓練をしてLVを上げることにした。



椅子の上に腰かけ手・人差し指先に魔力を集中”ライト!”と唱えると薄暗くなってきた部屋がぼやっと照らされろうそく程度の明るさになった。



もっと魔力を多くすると明るくなるかな?と指先に集中し体の中で流れているであろう魔力の感覚を増やす感覚を色々試してみたところ急に明るくなったり消えたりまたぼやっと点いたり中々安定しなかったが30分程試行錯誤しているうちにどうやら体から魔力を流す感覚が多少掴めてきたようで明るさは自在に、まるで日本で家の照明を明暗調整するのと同様に調節できるようになってきた。



「ふっー、魔力は全然減った気がしないけどやはり集中すると疲れは溜まるな。魔力枯渇でよりも集中力枯渇で苦しみそうだ。」



「ピーン♪レベルアップしました、生活魔法LV3になりました」



おっきたか。



「クリーンがクリーニング範囲拡大に、ライトがライト(中)光量増大・指向性変化へそれぞれ上がりました」



クリーニングってのは今はもう綺麗だから試せないけどと「ライト!」と唱えると発行体は小さいがかなり眩い光を放つようになった、”指向性変化”はそう考えると希望の方向へスポットライトの様に照らせるようになった。これも明暗調整できる様だ便利だな。



そうだ、明日、冒険者登録して都市の外で魔法の練習するか。



そうと決まれば寝よう、っとその前にクリーンはかけたけど一応お湯を浴びてサッパリしてこようかな。


と思いタオルをもって(初心者携帯品としてマジックバックに入っていた)裏庭へ行ってみた。




裏庭には水を都市の各所へ分ける樋から枝分かれした管が有り丸い巨大な桶にたまる仕組みらしい。


それを置いてある桶に自由に溜めて体をふいたり汗を流す様だ。


女性用なのか板壁で囲ったエリアの入り口には✘印と怒った熊(熊魔なのかご主人なのか?)の絵が描かれていたw




これって間違っては入って・・・いやいやそんなお約束はしないぞ!しないからな!




先に商人の様な男性が使っていたが入れ違いに戻った為一人になった知矢は桶に水を移しみたがちょっとこのまま浴びるのは冷たすぎるからと桶に”ファイアーボール”を入れて温めてみた。



「ファイアーボール!」  フィン!と風切り音がしたと思ったら




「バァコーン!!!------!!gasyaaaann!」





桶が弾き飛ばされ、水も飛び散り、地面は抉られ放心状態の知矢は泥にまみれていた。



「あわわわわあああああああ・・・・・」



驚いていると



「どうした!」


「何事だ!!」


「どろぼうかしら!」


「kyaaaaaa!」



宿を始め周囲が大騒ぎになる気配がしたと思ったら熊魔でなく宿の主と妻のミンダが太い薪を振り上げながら裏庭にすっ飛んできた!


惨状を見てミンダは


「何だい?何が起きたんだ! 


トーヤじゃないか


一体何が?


怪我してないかい!」



ミンダはドロドロで立ち尽くす知矢の姿を確認すると薪棒を投げ捨て心配して駆け寄って状態を確認してくれた。



「ミンダさんごめん、失敗しました(;´・ω・)」



しょんぼりしながら事の経緯を話すとミンダは


「はいはい!皆の衆大丈夫だよ、泥棒とかではないから安心して休んでくださいね!」


と野次馬や宿の泊り客を解散させてくれた。



「まあ、怪我がなくってよかったけど、トーヤのファイヤーってどんだけ威力あるんだい」


あっ!っと知矢はミンダのセリフを聞いて理解した。



「ごめんなさい、お湯を沸かすのはファイアーですよね、俺間違ってファイヤーボール使っちゃいました・・・・」


ファイヤーは火を指先から出し水中に入れると周囲の温度を上げて、長く時間をかけると沸騰も可能な生活魔法だ、しかしファイアーボールは指先から高温の火の玉を打ち出して攻撃する攻撃魔法である。



魔法初心者アルアルである・・・


いやきちんと魔法教育を受けている物ならば有り得ないミスである。


知矢は”指南書を読んで”少し練習しただけで、本来なら生活魔法と攻撃魔法は精神集中の練習段階から異なる性質の為、間違う事は有り得ないのがこの世界では常識であった。



「あんた間違ったって?どうやれば生活魔法と間違って桶を攻撃すんのさ!!」


とこっぴどく叱られた知矢は誠心誠意お詫びをして、桶や巨大な桶の破損を賠償し、地面にあけてしまった穴を一生懸命埋めたのであった。なお、土魔法での作業も可能かもしれなかったが又しでかすのを恐れてクワやスキを借りて一生懸命埋めて整地したのであった。




「ふわぁああ・・・・疲れた・・・」


やっと許されて部屋に戻った知矢は結局再度魔法で今度は新たに覚えた”クリーニング”を慎重に使用して身綺麗になった後ベットへ倒れ込むように寝たのであった。



なお、”クリーニング”は唱えると本人を中心に広範囲を一気に綺麗にしてくれる便利魔法であったがそんな結果を確認する前にすでに眠りについた知矢であった。



異世界転移一日目終了

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