星那と柚夏の艶姿
「まだかなー……」
「夜凪、お前……いや、待ち遠しい気持ちは分かるが、もう少し辛抱強く待てって」
そわそわと、やや更衣室から離れた場所で女性陣を待つ、夜凪と陸。
ちなみに一夜は、荷物を見張っているから迎えに行っておいでと、留守番を買って出てくれているためここには居ない。
そんなわけで、先程からやたらとそわそわしている夜凪に呆れている陸だったが……二人とも、ずっとどんな水着を買ったのか秘密にされていたため、膨れ上がった期待に辛抱もいい加減に限界だった。
とはいえ、女性の着替えは時間がかかるもの。
とても長く感じる時間の中……突如、ひとつの小さな影が、夜凪の腹部へと突撃して来た。
「おっと、一番乗りは朝陽ちゃんか。可愛いね、その水着」
「へへ、そうでしょ、そうでしょ?」
夜凪に褒められて、嬉しそうにくるくると回って新しい水着を披露する朝陽。
二次性徴前の子供らしい、性を感じさせないぺたんとした胸とすとんとしたお腹の身体を包むのは、ツートンのストライプのトップスと、同色のスカート風のボトムスを合わせたタンキニ風水着。
小学生らしい健康的な可愛らしさで、陸と一緒に可愛い可愛いと褒めちぎる。
「でも……夜凪お兄ちゃんは、お姉ちゃんが気になってしょうがないんでしょ?」
「それは、まぁ……はは……」
上機嫌に、悪戯っぽく笑って見上げながら宣う朝陽の言葉に、曖昧に笑って誤魔化す夜凪。
そんな時……先程朝陽が出てきた女子更衣室周囲が、にわかにざわつき始める。
――おい、あれ。
――うわ、二人ともレベル高っ
――おい、ちょっとアタックしてみようぜ
そんな囁きが飛び交う中。
「あ、お姉ちゃん達、こっちこっち!」
周囲のざわついた空気など知らぬとばかりに朝陽が呼びかけると、人混みの向こうからこちらに向かってくる二つの人影。
「……なんていうか、この場で男共に目潰ししたくなって来たね」
「物騒な事言うなよ……いや、すげぇ同感だけど」
こちらに向かってくる人影に合わせて動く男達の目線に、イラッとした様子でそんな物騒な事をポツリと漏らす夜凪と陸。
だが……男たちの反応もさもありなん。
それだけの存在感を放って、待ち人二人が姿を現した。
「じゃーん! どう? さぁさぁ陸、よー君、私達は男子諸君の忌憚なき意見をご所望だよ!」
「えっと……ど、どうでしょうか?」
人の波を抜けて姿を表すなり、見せびらかすように腕を広げてアピールする柚夏と、その影に恥ずかしそうに縮こまりながら控えめに尋ねる星那。
対象的な二人だが……その存在感は、周囲から集まっている視線を見れば、一目瞭然だ。
柚夏は、前で紐で結ぶタイプのミント色のビキニ。その布面積はかなり少なく、本人の自己評価とは裏腹にしっかりと谷間を形成し女性的で柔らかなカーブを描く胸は、普段の様子からは予想外の色香を放っていた。
一方で、色々行動したいからであろう、ボトムスの方はホットパンツを上から履いていたが……そこからチラチラと、トップスと同じカラーの生地が覗いている。
こちらもかなり股上が低く鼠蹊部がかなり露わになっていて、さしもの陸もゴクリと唾を飲み込んで、頬を染めて視線をそらしていた。
普段とは違って相当挑発的に攻めている、鍛えられ引き締まった健康的な肢体を惜しげもなく曝け出した、小悪魔的な雰囲気すら漂うそんな艶姿だった。
そんな柚夏は、すっかり陸が照れていると見るや、飛びつくようにしてその腕へとしな垂れかかった
「おやおやぁ? 陸さんや、どうしましたかなぁ?」
「そっ……それはだな、ちょっと刺激が強いと言うか……」
「んー?」
「その…………似合ってる、正直ちょっとグラッと来た」
扇情的な姿の柚夏に腕へと抱きつかれ、悪戯っぽく見上げられて……ついに、根を上げて、真っ赤になってそう褒める陸。
その一言を聞いて、柚夏は彼から見えないように、「……よしっ」と小さく呟いてガッツポーズを取っていたのだが、すでにいっぱいいっぱいな陸は、気付かなかったのだった。
そんな柚夏にも増して、周囲の視線を奪っている星那はと言うと。
こうして大勢の前に姿を曝け出すとよく分かるのだが……星那という少女は、非常に完成された肢体を持つ少女だ。
日焼けを知らぬような、透明感のある乳白色の珠の肌。
何か余計な手を加えようものなら途端に崩れ去ってしまいそうなほど、奇跡的なバランスで成立しているようなスタイル。
全体的に華奢なシルエットのそんな肢体の中で、ふっくらと存在を主張する胸部を覆い隠すのは、青と白を重ね合わせ、色の違うワントップスを二つ重ね合わせたような、左右で表に出る色が逆となるようなデザインのトップス。
縁をフリルに彩られた可愛らしいデザインのその水着に包まれた、身動ぎするだけでふるふると柔らかく揺れる二つの膨らみは、土台となる身体の華奢さも相まって、女性らしい柔らかな曲線を強調していた。
一方で下の方は、大事な部分は簡単には見せまいとするような丈の短いフリルスカートを備えたボトム。
しかし、それでもグッとくびれた腰から流れるように連なる、形の良いお尻の丸みを隠し切れてはおらず……可愛らしい白いスカートの裏に、薄らと透けるややローライズ気味の青いビキニボトムが妙にいたたまれない。
そんなスカートから覗く白い脚は女性らしい曲線を描いており、柔らかそうなのに細く、恥ずかしそうにピッタリ膝を閉じているにもかかわらず、間にできる三角形の隙間は否が応でもその奥を期待させてしまう。
総じて――清楚だがどこか扇情的、そんな危ういバランスを保っていた。
「ど……どうですか?」
いつもより遥かに露出の多い格好に、首まで真っ赤になりながらも、上目遣いに夜凪の方を見る星那。
だが、そのもじもじと手を前で組む所作は、はっきり言って危険だ。両腕に挟まれた柔らかな膨らみが潰れて、その間に深く渓谷が刻まれている。
……星那自身の仕草やその容姿からくる雰囲気によって、決してその佇まいにいやらしさは感じない。
感じないのだが……何というか、苛めたい、もっと恥ずかしがらせたい、そんな衝動に駆られそうな出で立ちだったりする。
そんな姿に、夜凪は……
「よし、帰ろう!」
「えぇ!?」
予想外の夜凪の言葉に驚いて、パッと顔を上げた星那。
だが、まるでその体を周囲から隠すように、すっぽり包み込むように抱きすくめる夜凪に、今度こそ星那はフリーズする。
「他の野郎共に君のそんな可憐な姿を見せたくない。帰ろう、帰って僕だけが愛でる!」
そんな事を真剣な表情で宣う夜凪に、周囲の男たちからチッと舌打ちの音が無数に重なって飛ぶ。
「あ、あああの、せっかく皆で遊びに来たんだし、それはちょっと……」
「そっか……それじゃ、これ着てて」
そう言って、自分が着ていた白いパーカーをいそいそと脱ぐと、星那の肩に掛ける夜凪。
その行為に周囲から、あぁ……、と落胆の声が漏れ聞こえた。
しかし、夜凪がそれをにっこりと、目が笑っていない笑みを浮かべながら睥睨すると、皆そそくさと目を逸らして散って行った。
一方で、星那はと言うと。
「……きゅう」
ただでさえ水着姿で抱きつかれて素肌の接触面積が未体験ゾーンに到達していたところに、突然、夜凪の纏っていたパーカーを被せられた事で……ついに許容範囲をオーバーし、夜凪の腕の中で目を回しているのだった。
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