第12話 新スキルが予想以上に便利だった

 昼過ぎごろ目が覚めた。

 【気配察知】になにかが引っかかったりすることもなく、ぐっすり寝ることができた。

 夜の残りのアップルンを食べ、軽く体を動かす。


 今日はちょっと速足でアップルンを採りに行こう。

 行き帰りのペースを昨日よりあげれば、暗くなる前には帰れるだろう。






 ◇◇◇◇



 アップルンのところまで半分ほど進んだとき、【気配察知】に何かが引っかかった。

 気配のする場所を探したら、近くの草むらの中に何かがいるのが分かった。

 危険な魔獣が潜んでいるのかと一瞬身構えたが、何かの気配はそれほど強くない。

 謎の気配は特に危険な感じもしないので、魔獣のランクで表すとGくらいだろう。

 相手の気配をもっとしっかり感じ取ろうとすると、気配の主はそれほど大きくないようだ。


 【気配察知】は俺が思ってたよりも便利な能力だったみたいだ。

 気配のする場所がわかるのはもちろん、ある程度の強さや大きさまで判別できる。

 【気配察知】をうまく使えばスライムなんかが見つけやすくなるので、進化までにかかる時間を短縮することができるだろう。

 ただ範囲が非常に小さいのが難点か。

 もともと俺は人間で日本という平和な国に住んでいたので、気配を感じ取るような技術を持っていたわけではない。

 だから【気配察知】の範囲も小さいのだろう。


  と、その前にまずは目の前の敵の姿を確認しよう。

 【ファイアーボール】を草むらめがけて放って先制攻撃を仕掛ける。

 燃えカスとなった草の中にいたのは、水色のゼリーのような体をした謎生物、もといベビースライムだった。


 俺は草の中にいるのはベビースライムと予想していた。

 根拠は気配が強くなさそうなのと、気配の形が丸に近かったからだ。

 この辺でその条件に当てはまるのはスライムくらいだろう。

 決してスライムだと分かったあとに、俺は最初からスライムだと思ってたって考えたわけじゃないぞ。


 いかんいかん、話がそれた。

 まずは【鑑定】。


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種族:ベビースライム Lv2

名前:なし

状態異常:なし


体力 :28/30

魔力 :11/11

攻撃力:13

防御力:18

魔法力:4

素早さ:7

ランク:G


固有スキル

【触手Lv2】【分裂Lv1】


スキル

【捕食Lv2】【受け流しLv2】【再生Lv1】


耐性スキル

【物理耐性Lv1】【魔法耐性Lv1】


称号

【産まれたて】


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 このスライムはLv2か。

 体力と防御が高くて【受け流し】もLv2だから、昨日のよりも倒すのは面倒そうだが倒せないってわけではないな。


 時間をかけるわけにはいかないので、【ファイアーボール】を三発放つ。

 そのあとは昨日と同じように、近くの木のちょうどいい高さにある枝に上って攻撃するだけだ。


 狙いを定め、一直線に突っ込む。

 目くらまし代わりに【ファイアーボール】を一発放ち、その間に一気に迫る。

 体の大きさはスライムより俺のほうがでかいので、正面からぶつかることができれば核に体をぶち当てるか貫くなりして倒すことができるはずだ。


 燃えてるスライムに突っ込むまであと少しというところで、炎の中から横に振られた【触手】にぶたれ、軌道が右に思い切り逸らされた。

 さらにスライムは、核を体の右端(スライムから見てなので、俺から見ると左側)に移動させ【受け流し】を使うことで、核への直撃は避けていた。


 結果としてスライムの核の端っこに少し傷を負わせる程度で耐えられた。

 耐えられたものの、ぶち当たったゼリー状の部分を失わせることはできた。

 核を守る粘体の部分は、最初の三分の一ほどしか残っていない。

 これでは核を守りつつ攻撃を受け流すことはできないだろう。


 【触手】攻撃をよけて近づき、隙をついて【爪撃】で切り裂く。

 残ってた粘体の量では攻撃を受け流すことはできなかったようで、勢いをつけて突っ込まなくても簡単に核を切り裂けた。


 スライムのゼリーの部分が蒸発したように溶けてなくなり、その場には核だけが残っている。

 どういう仕組みなのかホントに謎だよな。

 なんで核だけ残るんだろうか。


「ピイイ? (ん、なんだ?)」


 スライムを倒したらなんかよくわからん感じがした。

 嫌な感じではなく、満たされていくような感じだ。


 とりあえず原因を探るためにステータスを見たら、レベルが5まで上がっていた。

 さらに、レベルの横にMaxと出ていた。


 え? もしかして進化できるってことか?

 不思議な感覚も、進化できるようになったのをうっすらと感じ取ったからなのか?


 やべえ、テンション上がってきた!

 よし、さっさとアップルンを採って帰るか。

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