第7話 ワーム、実食

 ワームは攻撃スキルも持っておらず、体力も1しかなかったので一撃で仕留められた。

 倒したワームを改めて観察する。


「ピュイィィ……。(なんかこのミミズがうまそうに見えるんだよな……。)」


 ミミズを見ていたらなぜかおいしそうだと思ってしまう。

 鳥の本能の部分がそう感じさせるのだろうか……。

 地球でもミミズを食べる鳥は居たし、そうおかしなことではないだろう。


 今は食料も少ないし食うしかないか。

 とはいえ、さすがに生で食うのは生理的に無理だ。

 なので、【ファイアーボール】で焼いて食べようと思う。

 ちょうど日も落ちてきたし晩飯にしよう。


 スキル検証の時に【爪撃】で倒した草を、さらに何等分かに分けてまとめる。

 近くに落ちていた枝なんかもまとめて、【ファイアーボール】で火をつける。

 これで小さな焚火を作ることができた。

 そして最後にミミズをぶち込む。


 ミミズに火が通ったのを確認したら、はばたいて風を送り火を止める。

 この時に左翼に引火したのでかなり焦った。

 すぐに転げまわって火は消したから、少しのダメージで済んだ。

 すごく熱かったけど、火が消えたあとは火傷の痛みとかは特に感じなかった。

 このへんも炎に適性があることが影響しているのだろう。


 落ち着いたのでミミズを見る。

 いい感じに火が通り、香ばしい匂いがしている。

 おお! 見た目はちょっとあれだが、すごくうまそうな匂いだ!


「ピュ~イ! (いっただっきま~す!)」


 一口パクリ。

 おお! すげぇ!

 ぷにぷにした独特の触感が面白い。

 噛むごとに肉汁みたいな旨みがあふれ出してくる。

 ミミズステーキめっちゃうめぇわ。


 ゆっくりと味わいながら食べていたが、もう一口分しか残っていない。

 最後の一口を噛みしめながら味わって食べる。

 はぁ、スゲー美味かったな。

 目が覚めてからいろいろなことがあって疲れてたから、余計に美味く感じるのかな。

 ミミズステーキは、今までに食べた料理の中でもかなり美味しいと感じてしまった。

 それでもオカンの作ったハンバーグには遠く及ばんけどな。

 ふぅ、美味いもん食ったらだいぶ気持ちが楽になった。


 よっしゃ、アップルンの味も拝見といこうじゃないか。

 アップルンにかじりつく。

 そのとたん、みずみずしい果汁が口の中にあふれてきた。

 甘味の中に程よい酸味があって絶妙なハーモニーを奏でている。

 一言で言ったら最高。


 食後のデザートとしてもぴったりだし、のどの渇きも潤すことができた。

 まだ半分ほど残っているが、明日の朝に残しておいたほうがいいだろう。


「ピュイ(ごちそうさまでした)」


 残りのアップルンを咥え、ジャンプと【飛翔】で巣に戻り、端っこにアップルンを置く。

 巣のある木は枝が少ないので、【飛翔】だと巣までギリギリ届かず四苦八苦してたら、【飛翔】のスキルレベルが2に上がったため、巣に持っていくことができた。

 Lv2だと地面から二メートル程は飛び上がれるが、その後はすぐに滑空する感じで落ちる。

 もう少しスキルレベルを上げないと、まともに飛ぶことはできなさそうだ。

 滑空できる距離は伸びたけど。






◇◇◇◇



 ……今日はいろいろあったな。

 目が覚めたら森の中だし、鳥になってるし、グリフォンなんてバケモンいたし。

 ステータスやスキルなんかがあって。

 ファンタジーな世界に転生してた。

 命がけで食べ物探してアップルンを見つけて。

 ミミズを倒して、焼いて食べたらめっちゃうまかった。


 ……母さん、名前も顔も思い出せないけど、今まで育ててくれてありがとうな。

 そっち日本で元気に生きてくれよ。

 俺はこっち異世界で頑張って生きていくからな。

 少なくとも、簡単には死なないように頑張るからな。

 いままでホンマにありがとうな……。



 今日のことをいろいろと振り返っているうちに、気づいたら眠ってしまっていた。

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