第63話

あの一件以降、有栖川を見る目が変わったのは言うまでもない。

 以前は大事な婚約を破綻させたことに対する恨みからの視線とばかり思っていたが、今は……うん。隣の席であることに対しては変わらずとも地獄であり、俺からしてみれば早く来月になってほしいとさえ思っている。でなきゃ、席替えでしか代えられないからな!

 現在も数学の授業中ではあるけれど、隣の方をちらっと覗いてみれば、頬杖をついた状態でうっとりとした金髪イケメンの視線と思わずぶつかってしまう。

 もはや気持ち悪いを超えて、げんなりしてしまうようなそんな心境だ。

 まさかあの金髪イケメンが“そっち側”だったとは……。

 いや、今の時代LGBTに対する理解力とか上がってきているし、同性から好かれること自体はまぁ悪い気はしないよ? 嫌われているよりかはマシだと思うしね?

 でも……なんと言い表せればいいのだろうか。

 上手い言葉が見つからないのだが、普通に女の子が恋愛対象な俺からしてみれば、複雑な思いでしかない。

 ――どうやって有栖川の好意から逃れようか……。

 大事な授業時間だというのに、そればかりを考えてしまって内容が全然頭に入ってこない。

 そもそもなんで断るためだけにここまで悩まなくちゃいけないんだよ。普通に「無理」の二言で十分じゃないか。

 これも俺の中に少しは残っている相手を傷つけまいという良心の現れなのだろうか。

 俺は深いため息を吐くと、肩に力を入れたところで気を取り直し、授業へと戻る。

 まぁ……困った時は時間が解決してくれることを待つしかないよな。

 いつまでも悩んだところで仕方がない。時間の無駄だ。


【あとがき】

 お久しぶりっす。最近は忙しくて更新できてなかったけど、全然エタっているとかじゃないからね!?


 それにしても……前話のBL的なくだりはやりすぎた。別にそういうところにもっていきたいわけではないし、もちろんありえない結末ではあるけれど……あれは、うん。やりすぎたね

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