最終章 二学期

第60話

 夏休みが終わったとはいえど、まだ外の暑さは和らぎを見せていない。

 あれだけうるさかった蝉の鳴き声こそ聞こえなくなり、夏という季節が過ぎ去ってしまったことに対してちょっぴり寂しさすら感じてしまうが、この気持ちって一体なんなんだろうね? 日本には美しい四季があるからなのかな? 今年も過ぎてしまったなという虚しい感情と新たな季節に対してのどんな風景を目にすることができるのかというワクワク感……俺だけか。

 何はともあれ今日から二学期。

 そもそも夏休みが設けられている理由としてはクソ暑い中で授業を行うと、熱中症や日射病など身体的な健康被害が起こってしまいかねないため、それを予防する目的で四十日間を目処にして夏季休暇を取らせているわけなのだが……休み明けの一週間後に体育祭というものはいかがなものか。

 各自治体や学校ごとに体育祭が行われる時期は異なっており、近年では五月に開催するところもあるみたいだが、大概は九月の第一週の日曜日になっているはずだ。

 中学校はその一週間後の日曜日だと思うのだが、これじゃ夏休みの意味なんてなくないか?

 だって、夏休みが設けられている理由としては暑さによる健康被害をなくすためなのに休み明け直後に体育祭を開催するとかバカでしょ? 毎年のように一人から十人くらいは予行練習中にぶっ倒れて保健室だったり、はたまた救急車が来る事態になっているのだが、いつになったら学んでくれるのだろうか。

 まぁ、学校での行事だったり、日程の関係上、別日に移動しづらいということもわからなくはないけどさ。

 今年もあの忌々しいものが開催されると思うと……ははは。

 だいたい、体育祭なんて運動ができるやつのためにあるようなもんじゃねーか。俺のような動けない陰キャからしてみれば、ただのお荷物。わかる人にはきっと俺の気持ちがわかってくれるはず。徒競走とかで最下位になってしまった時のなんとも言えない空気感とかさ。

 考えれば考えるほど、体育祭に対しての不平不満が止まらない。

 学校へ登校して以来、クラスの教室に入ってからというもの自席でいつものように勉強をしていたのだが、その手はほとんどと言っていいほど進んではいなかった。

 周りを見渡せば、いつの間にかほぼ全員登校してきているし、時計を確認すれば、来た時からすでに二十分も経過している。

 そして、SHLが始まる予鈴が鳴り、教室であっちこっちたむろしていた生徒はみんな、自分の席へと戻っていく。

 しばらくして、担任が室内へ入ってくると同時に一人の男子生徒がその後ろをついていく。

 教卓の横に立っている男子生徒にクラスメイトたちはざわめきだし、特に女子からの熱い声がところどころから聞こえてくる。

 見たことのない制服……それだけで転入生であることは理解できるのだが、


「いきなりで驚いている人もいるかもしれませんが、今日から同じクラスメイトになる有栖川くんだ。じゃあ、有栖川くん。改めて自己紹介をしてもらえるかな?」

「初めまして。東京から来た有栖川健と言います。今後とも仲良くしてもらえたらなと思います」


 …………見覚えがある。

 いや、最初は他人の空似かなとか思っていたけれど。名前を聞いた瞬間に確信してしまったよね。


「はい、ありがとう。有栖川くんはまだこの学校に来たばかりで校舎内とかもあまりわからないと思うから、その時は親切に教えてあげるように。では、席は……あ、ちょうど田代の隣が空いていたな。そこに座ってくれるか?」


 ……マジかよ。

 あの綾小路の元婚約者である金髪イケメンは俺のことに気がついた瞬間、ニコニコしながらこちらの方へと歩み寄ってくる。

 もしかして、婚約の場を破壊してしまった腹いせに俺を痛ぶろうとでもするのか?

 俺は気がついていないフリをしながら、視線を机の上に向ける。


「やぁ、田代くん。鎌倉以来だね」

「あ、えーっと……」

「君に再び会えることを心から待ち望んでいたよ。これから同じクラスとしてよろしく頼むよ」

「こ、こちらこそ……」


 やはり復讐するためにわざわざこっちまで引っ越してきたというのだろうか。

 有栖川はなんの躊躇もなく、隣の席へと着いた。


【あとがき】

 最近、あんま更新できてなくてすんません。結構、プライベートが忙しいっす。

 やりたいこともなんとなく見つけたし、これからは少しずつ勉強していかないとなぁ……。ウェブページ作成だったり、日商簿記二級だったり……。


 体育祭、個人的にはめっちゃ嫌いでした。

 それと最近、モンハンライズにハマって深夜帯でやりまくってます!

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