第37話 綾小路 side

 ずっとずっと会いたかった。

 ひと時の夏の間だけではあったけど、私にとっては何よりも変え難いかけがえのない思い出。

 だからこそ、別れの際にまた会おうねという気持ちも込めて手作りのピンクのミサンガを裕太くんに上げた。そしてピンク色の意味は“恋愛”……つまり彼と結婚できますように……そう願いも込めて――。



 最初、目にした時はよく似たものだと思っていた。

 だけど、田代くんの話を聞く限りではすべてが一致していた。

 ただの偶然……その線も考えられるけれど、よくよく見れば当時の面影もなくはない。名前も同じなのだが、唯一違う点を挙げれば、苗字くらい。

 そう考えると、彼の家庭状況を以前調べた際に親とは別居しているところまではわかっていた。もっと詳しく調べれば、田代くんが裕太くんなのかがはっきりするかもしれない。

 ベッドの上でうずくまっていた時、室内にノック音が響く。

 田代くんだったらどうしようかとも思ったが、次の声を聞いた瞬間、少しほっとしてしまう。


「お嬢様。林田でございます。少々お時間をいただけないでしょうか?」


 私はベッドから降りると、ドアまで歩み寄る。


「何かしら? 呼んだ覚えはないのだけど?」

「それは失礼しました。ですが、何か私にご要望があるのではないのですか?」


 このジジィ……結構、歳を食ってる割には勘が鋭い。

 私は短いため息をその場で吐くと、田代くんが叔父夫婦の養子縁組に入っているかどうかを調べるよう指示を出す。


「かしこまりました。それにしても今朝までとはなんだか様子が変わられましたね」

「そう? いつも通りだと思うんだけど?」

「いいえ、今朝までは顔が死んでましたから」

「……主人に向かって、ちょっと失礼じゃない?」


 林田は「申し訳ございません」と深々に頭を下げた後、「それでは仕事をして参ります」と残して、去って行ってしまった。

 再び一人になった私はベッドの上に仰向けの状態になる。

 両家顔合わせは明日の午後から。

 私はそっと瞼を下ろし、闇の中へと落ちていった。


【あとがき】

 重大発表の件なのですが、企業案件をいただくことになりました!

 詳しいことはまだ言えませんが、カドカワグループではなく、海外のエンターテイメント企業でありがたいことにそこが出している読書アプリの方で掲載しないか打診でした。アプリ自体はまだ日本語版は開発途中らしいのですが、海外では結構主流な読書アプリらしくて、ユーザーも全世界で1億人以上いるらしいです。


 と、まぁそういうわけで独占的ライセンス契約を締結するにあたってカクヨムで現在掲載しております『ずっと好きだった幼なじみに告白したら、フラれてしまったのでイケメンになって見返そうと思います』を一括非公開に致します。詳しくはまた近況ノートにでも記載するかと思いますので……一応、電子書籍化なのかな? ワカンネ。

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