第28話
中央駅に隣接したショッピングモールには多くの利用客で混雑していた。
夏休みということもあって、特に子どもたちを引き連れた家族連れをよく見かける。
昼下がりの午後ということもあって、大勢の来客者がそれぞれウィンドウショッピングを楽しんでいた。
それはもちろん俺たち……いや、綾小路も例外ではなく、
「ちょっ……買いすぎだろ!?」
俺の手には大量の紙袋が握らされていた。
案の定、荷物持ちである。綾小路が買い物に行こうと言い出した時から一応、覚悟はしていたけれど、さすがにここまで物を購入するとは思わなかった。特に靴や衣類など旅行に着ていくにしても、無駄に多すぎる。おそらく俺が荷物持ちをいいことにこの際、爆買いしてやろうとでも思ったんじゃないか?
「まだまだよ。これでもまだ半分もいってないんだから」
「いや、嘘だろ……? もうどれくらい使ってんだよ」
「十万くらい?」
「十分じゃないか?!」
一回の買い物で十万はごく一般的な日本人からしてみれば、使いすぎなような気がする。せいぜい多くても二、三万くらいだろ……。
って、思ったけど、よくよく考えれば綾小路はお嬢様だった。小さい頃からお金に不自由しない暮らしをしていれば、自ずと庶民との金銭感覚もズレていくわな。
だが、これ以上荷物を増やされては俺の両腕が死ぬ! ただでさえ、運動も筋トレもしていないんだぞ? 生粋のザ・帰宅部にはかなりハードっすよ。
「……わかったわ。今回はこれくらいにしてあげるわ」
綾小路は俺を侮蔑的な目で見た後、ため息を吐く。
表情には「どんだけ力がないのよ」と言いたげにも書かれていた。悪かったな。ひょろひょろのガリガリで!
「でも、最後にもう一つ寄りたいところがあるのだけど、いい?」
「まぁ……そこが最後なら」
「ありがと。じゃあ、一旦その荷物をロッカーに預けに行きましょ」
「ああ……」
少しの間ではあるが、やっと楽になれるか……?
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