第4話【改稿済み】
空を見上げると無数の星が散りばめられ、淡く光った月が優しく地上を照らし出している。
午後十時前。ようやくバイトを終えた俺は家路へとついていた。
ぽつぽつと等間隔に点灯している街灯を目印に住宅街をゆっくりとした足取りで進んでいく。
今日は店長にこっぴどく怒鳴られてしまった。あれから急いでバイト先に向かったのだが、それでも十分は遅れてしまった。
たった十分で怒鳴るのもどうかと思うのだが、クレープ屋の店長はやけに時間に厳しい。見た目もヤ◯ザなんじゃないかって疑いたくなるくらいにいかついし、結局俺はずっと頭をぺこぺこと下げることしかできなかった。しまいにはクビ宣告までされてしまったし……。
一回の遅刻だけでクビというのも労働基準法に違反しているのではないだろうか? いわゆる不当解雇っていうやつだ。このことを労働基準監督署にでも告発してやろうか……と一瞬頭を過ったがこの際、本当に辞めてやろう。ちょうど辞めようか悩んでいたところだったし、そもそも証拠がない以上、告発したとしても言い逃れされてしまう可能性だってある。
負け戦はやらない……それが俺のポリシーというやつだ。
幸いと言っていいべきかわからないが、朝は新聞配達をして、放課後にはクレープ屋以外にうどん屋でも働いている。
やはりバイトと言えば飲食店に限る。賄いが出ることによって食費も多少浮くしな。
そうこうしているうちにやっと一人暮らしをしているアパート(木造築五十年)へと辿り着く。
自分の部屋に向かう前に郵便受けを確認する。スーパーの特売チラシならともかく怪しい宗教勧誘とかのチラシは本当入れてほしくないよね。ムダにゴミが増えるだけだし。
ざぁーっとチラシを流し見していく中である一枚の紙に目が止まる。
「“家庭教師募集”?」
俺は気になり、募集要項に目を移す。
【募集条件】
①高校二年生であること。
②学年成績が一位であること。
③近辺の高校に通っていること。
以上の三つが挙げられていた。
そして、一番肝心な給料はというと……
「平日三時間で一万円?!」
破格と言っていいほど、めちゃくちゃ高時給だった。
しかも休日は八時間で三万円支給してくれるらしい。
今の俺からしてみれば、まさに願ったり叶ったりの神バイト。募集条件も奇跡的に当てはまっているし、もはや俺のためにあるみたいなものだ。これだけもらえるのであれば今やっているバイトをすべて辞めても生活には十分に余裕ができ、受験勉強にも励むことができる。
「いや、だけど……やっぱりこれは怪しすぎる……」
紙には電話番号も記載されていたため、すぐにでも応募したい衝動でいっぱいだったが、こんなの普通に考えておかしい。きっと無意識に何かの犯罪に加担させられるに違いない。
――ここはもっと慎重に考えるべきか……?
とりあえず俺は部屋へと向かうことにした。
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