第2話【改稿済み】
ホームルームを終え、そそくさと帰り支度を済ませる。
担任がいなくなった教室内は一気に放課後ムードに染まり、一日の疲れをねぎらいあったり、この後の部活の準備など様々だ。
みんなそれぞれの放課後があるように俺にもこの後やるべきことがある。毎日のルーティーンと言ってもいい。バイトだ。
今日は駅前にあるクレープ屋のシフトが入っているはず。スマホにインストールされたスケジュール管理アプリに視線を落としながら教室を出ようとした時、ふと制服の袖を掴まれたような感覚がした。
「ちょっと……待ちなさいよ」
後ろへ振り返らなくてもわかる。綾小路姫花だ。
「なんだ?」
俺は静かに肩を落とす。
――どんだけしつこいんだよこいつ……。
クラスメイトたちは先ほどまで騒がしかったというのに今は俺たちの方に注視したまま、固唾を飲んでいるようにも見えた。
「もうわかってるでしょ? 私が連日あれだけ言い寄ったというのにどうして(勉強に)付き合ってくれないの?」
その瞬間、クラス中が一気に騒がしくなった。女子からの「きゃ〜♡」という歓喜や男子からの「ぎゃ〜ッ!」という
――こいつわざとなのか? わざとだろ!?
一番大事な主語が抜けているせいで俺が告られたみたいな誤解が発生しているんですけどぉ!?
このままじゃ、いろいろとマズい……。恋愛好きな女子からの「もちろんOKするよね?」みたいな期待の籠った眼差しとそれとは裏腹で男子からの「OKしたらコロス……」と言わんばかりの殺気だった視線。ここで誤解云々はともかくとして答えを出すのは非常に避けたい。そうでなければ、せっかくの平穏だった高校ぼっち生活が破滅してしまう!
「お前……やってくれたな」
綾小路姫花の顔はニヤリと嫌な笑みを小さく作っていた。
「なんのこと?」
「しらばっくれんな。とりあえずここじゃマズいからこっちに来い」
俺は綾小路姫花の腕を掴むと、廊下を走り抜けた。
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