成績学年2位の美少女の家庭教師をすることになった
第1話【改稿済み】
――物語は二年前へと遡る。
高校に進学してから一年が過ぎ、二年生となった春。
クラスはもちろん変わり、教室内には見覚えのない生徒もちらほらといる。
そんな中、今は昼休みなのだが俺、
「まーた田代くん勉強してるよ」
「勉強しか頭がないんじゃな〜い? ほら、この前の試験も学年一位だったし〜。そもそも友だちとかいないでしょ(笑)」
教室の片隅に集まっているギャルたちが俺のことをちらちらと見ては嘲笑っていた。
――うっせぇわ! てか、ぼっちで何が悪い? 勉強は学生の本分だろうが!
何一つとして誰にも迷惑なんてかけちゃいない。それでいて他人に何かを言われる筋合いもない。
だいたい、俺はぼっちでいること自体気に入っている。誰の目を気にすることなく、のびのびと好きなことができるしな。それに青春というものはテレビや漫画などで美化されすぎだと思う。実際にはそんなにいいものではない。てか、青春ってなんだよ。アオハルって何?
動物みたいにギャーギャーうるさいギャルたちのせいでついつい別のことを考えてしまった。こうして勉強できるのも俺にとっては貴重な時間だ。放課後はバイトを掛け持ちしているということもあって、毎日のように働いているし、休日も朝からラストまでみっちりとシフトを入れている。
いろいろとあって、親元を離れて一人暮らしをしているわけだが、今のところはなんとかギリギリ両立ができている範囲。
だけどこの先のことを考えると、正直この生活は厳しいかもしれない。来年は受験生だ。大学受験のことを考えると、今からでも準備に取り掛からないとマズい。なにせ志望校は日本で一番偏差値の高い名門T大だからな。この学校で学年一位の頭を持っていたとしても全国で見れば大したことはない。昨年学校で行われた全国模試ではなんとか二桁台には滑り込めたがそれでも二十位だ。これから受験シーズンに入ってくることを考えると、みんな塾に通ったりして学力を格段と上げてくるだろう。
それに……特待生枠を狙っている以上、全国模試で最低一桁台を取らないと無理だよなぁ。
思わず大きなため息を吐いてしまう。この特待生枠に入れると、授業料が四年間タダになるほか、大学から月に二万円の給付奨学金を得ることができる。まさに一人暮らしをしている俺からしてみれば、夢みたいな制度というわけだ。ただし枠内に入れるのは毎年一名のみと決まっているんだけどな。
「とりあえず今のバイトを辞めて、高時給のバイト探さないと……」
これまではある程度生活ができて、勉学とも両立ができればいいと思っていたけど、本格的に受験を意識しなければ本末転倒もいいところだ。
「せっかくの休み時間まで勉学に励むとはさすが学年一位の秀才ですね」
次こそ勉強に戻ろうとした時、すぐそばから少しトゲが混じったような声を投げかけられた。
ひとまず無視という選択肢を選んだ俺は参考書を見ながらノートにシャーペンを走らせる。
「って、ちょっと! なんで無視するの!?」
参考書を取り上げられてしまった。
仕方なく俺は顔を上げる。そこには同じクラスの超絶美少女こと
綾小路姫花は見た目通り、めちゃくちゃと言っていいほど可愛い。腰のあたりまで伸ばされた黒髪はサラサラしていて、顔は千年に一人という比ではなく、もはや一万年に一人の逸材と言っていいほど端正に整っている。噂では芸能界の大手事務所数社から直接スカウトマンが派遣されたくらいだと耳にはしているが、真相はわからん。でも、そう言われて信じてしまうくらいには美少女であることに間違いはない。
「……超絶美少女さまが俺になんの用なのかは知らんが、参考書返してくれないか?」
「嫌よ。あなたが私に勉強を教えてあげると言わない限りは返してあげない」
先日からそうだ。
俺に勉強を教えろとしつこく迫ってくる。
「なんで俺が勉強を教えなくちゃいけないんだよ……。そもそも俺が教えてやるほどお前はバカじゃないだろ」
綾小路姫花の成績はどう見ても優秀だ。先日の試験でも俺の次に名を連ねていたし。
「あなたに勝てない限りはバカも同然。いいから勉強教えて!」
なんだよその極端な考え方は。
綾小路姫花はバンッと机を両手でつくなり、前のめりになる。綺麗な顔がすぐ近くまで来て、こっちが何故か照れてしまう。
俺はそれから逃げるようにして席を立つと、教室を飛び出した。
「あ、ちょっ?!」
あんな綺麗な顔立ちで迫られたら変な気を起こしてしまいそうで堪ったもんじゃない。前々から俺にだけ当たりが強いからライバル視されているんだろうなとは思ってはいたけど、そんなライバルに教えを乞うなんて何を考えてんだよ。ったく……。
おかげさまで貴重な休み時間が丸潰れだ。
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