第67話
その日は周辺のお店で聞き込みを行い、暗くなってからネットカフェへと向かった。
ここのお店はシャワーも完備しているから、あたしはネットを使う前に体を綺麗にすることができた。
昨日よりはずいぶんと快適な空間に、ホッと安堵の息がもれる。
「やっとスッキリした」
そう言いながら個室へと戻ると、あたしが座るハズのソファに4人がいる。
「ちょっと、端へどけてよ」
長いソファとパソコンしかない部屋の中、ソファを独占されるとあたしの居場所がなくなってしまう。
あたしは妖精たちを端へよけて、ソファに腰を下ろした。
昨日今日と歩きづめだったから、さすがに疲れた。
このまま眠ってしまいたい気分だったけれど、美影に怒られることが目に見えているので、頑張って目をこじ開けることにする。
「んーと。とりあえず、妖精で検索してみようかな」
カタカタとキーを打つあたし。
そんなあたしに注目する妖精たち。
「そういえばさ、美影……」
「なんだよ、月奈」
「ここには、妖精いないね」
ここはネットカフェ。
たくさんのパソコンがあるのに、その周りに妖精の姿はない。
「あぁ。使う人間が入れ替わるからだろ」
「え? 人間に触れられたら妖精が生まれるんじゃないの?」
その質問には、菜戯が答えた。
「基本的にはそうだが。一定の人間に長く触れられていた物の方が、魂は宿りやすい。人間の年の重さの違いだな」
「そっか。人間が物に愛着を感じるのと同じなんだね」
なんとなく、わかった気がする。
お気に入りの洋服を何度も着るのと同じだよね。
その中に新しい魂が生まれるなんて、なんだか不思議。
そんなことを考えながら検索していると、目にとまったブログを見つけた。
ブログタイトルは【妖精と生きた僕。そして妖精は消えた】
「妖精は消えた……?」
ブログは去年の年末から更新されていないようで、あたしはさかのぼって読んでみることにした。
最初の記事は去年の初めの日付だった。
ブログを開設した数日前から、【僕】は妖精が見えるようになったと、書いてある。
「この人も、あたしと同じでいきなり見え始めたのね」
そして記事を読み進めるうちに、妖精たちとの交流を深めていく姿が書かれていくようになった。
一緒に遊んだり、いろいろな話しをしたり。
まるで、今のあたしの事を読んでいるようだった。
しかしそれは日常的なブログと大して変わらず、妖精が人間になるというようなことは、書かれていない。
「ん~……これが最後の記事かぁ」
半分諦めた状態で、最後のページを開く。
するとそこには【北の魔女について】という文字が書かれていた。
いきなり飛び込んできた文字に、あたしは「あっ」と、小さく声をあげた。
「月奈! これだ、これ!!」
美影が興奮したように言う。
「う、うん。わかってる」
まさか、本当にこのうわさの記事が出てくるなんて思ってもいなかった。
【僕は北へ、魔女のような妖精を探しに行く。妖精が、人間になるために、魔女に会う必要がある】
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