第66話

☆☆☆


それから数時間後。



コンビニで朝ご飯を買ったあたしはコンビニの前に設置されていたベンチ座った。



「まだまだ、時間があるなぁ……」



時計を確認すると午前8時。



ネットカフェや、他のお店が開くにはまだ時間がある。



それまでどうしようかな……。



そう考えながらおにぎりをほおばっていると、チリンチリンと鈴の音がきこえてきて、あたしは視線を巡らせた。



すると、コンビニの駐車場を突っ切ってこちらへ歩いてくる白い猫を見つけた。



フサフサの毛、赤色の首輪に金色の鈴がついている。



近づいてきた猫に手を伸ばして触れてみると、長い毛に指が埋もれた。



「わぁ可愛い」



猫は人に慣れているらしく、逃げようとしない。



喉をさすると、ゴロゴロと音をたてて、その場に伏せて目を閉じた。



その表情はとても心地よさそうだ。



けれど、妖精たちは猫が苦手らしく、みんなあたしの座っているベンチんも上へと避難してきた。



「猫、苦手なの?」



「俺たち妖精は、動物全般が苦手だ。人間以上に勘が鋭いから見えて当たり前。下手をしたら食べられてしまう」



クイッとメガネをかけなおしながら、菜戯が説明してくれた。



「動物は妖精が見えて当たり前なんだぁ……」



なんか、ちょっとうらやましいかも。



自分が美影たちの姿を見ることができなくなった時、やっぱり、少しは辛かったから。



「妖精とも仲良くしなきゃダメだよ?」



そう言って、猫の首元に触れた時……。



そこからポロっとピンク色の石が転がり落ちた。



「なに、これ」



キラキラと光っている綺麗な石。



猫の首輪にでもひっかかっていたのだろう。



あたしはそれを手に取り、光にかざしてみた。



透き通った、宝石のようだ。



そうこうしている間に、猫が起き上がり、チリンチリンと鈴を鳴らしながら来た道を走って帰り始めた。



この石は飼い主さんの持ち物かもしれない。



返さなきゃ。



そう思って「ちょっと待って!」と、声をあげると、猫が一瞬立ち止まり、こちらを振り向いてから、また走りだした。



「あ……行っちゃった……」



あたしはポツリとつぶやき、猫が残していった石を見つめたのだった。

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