第55話
白堵さんが指定してきた場所は、意外にもコンビニだった。
しかも、あたしのバイト先のコンビニ。
「あたし、今日は休みなのに来るとはなぁ」
「仕方ないよ。それに、このコンビニを知っているてっていうとこは、ますます期待できるんじゃない?」
月奈ちゃんの言葉に、あたしはうなづく。
美影白堵さんのペンネーム由来が、あの子たちにあるかもしれないんだ。
そして、コンビニで待つこと10分。
白い車が駐車場に止まり、背の高い男の人が下りてきた。
「あ、もしかして、あれかな?」
陽菜ちゃんがコンビニの中から外を見て言う。
「そうかも……」
サングラスをかけて、いかにも業界人という風貌をしている。
なんていうか、オーラが違う。
「こっち来るよ!」
コンビニに入ってきたその人がキョロキョロとあたりを見回し、そして、あたしたちに気が付くとこちらへ歩いてくる。
どうしよう。
こっちから声をかけた方がいいのかな?
ドキドキしながらも、あたしは背筋を伸ばしてその男性へ視線を向ける。
「あ、あのっ」
すぐ近くまで近づいてきたとき、あたしは声を絞り出して話しかけた。
「みっ……美影、白堵さんですか?」
その質問に、男性は少し驚いたような表情をしてから「そうだよ。君が、月奈さん?」と、聞いてきた。
「は、はいっ!!」
「驚いたな。こんなに若い子だとは思わなかった」
美影白堵さんはそう言って、ぽりぽりと頭をかいた。
ん?
どういう意味かな?
首をかしげていると、「君は、随分と大人っぽい思考回路を持っているようだね」と、美影白堵さんが言う。
「大人っぽい……?」
どうしてそう思ったのかわからなくて、あたしは陽菜ちゃんと目を見交わせた。
「そちらは?」
「あ、お姉ちゃんです」
「鳥谷陽菜です」
「お姉さんか。はじめまして、僕の作品は読んでくれた?」
「もちろんです! 妖精のお話、すごくよかったです」
「ありがとう。君も、妖精が見える?」
「はい。月奈と違って、今もちゃんと見えています」
「なるほど……」
美影白堵さんは呟くように言い、顎髭をさする。
「あ、あの。妖精について、もっと詳しく教えていただけませんか?」
あたしは、勇気を出して美影白堵さんへそう言った。
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