第47話

今日の夕食はロールキャベツ!



よく煮込んだロールキャベツを一旦冷蔵庫に入れてあえて冷やしているんだけれど、これが絶品!!



あたしが作ったトマトスープも上出来!!



「おーいしいっ」



口いっぱいにおかずを頬張る。



「月奈、今日は頑張って沢山手伝ってくれたのよ」



「そうなの? 月奈もついに彼氏ができたみたいだし、女子力磨かなきゃね」



陽菜ちゃんの言葉にあたしは思わずむせてしまう。



「あら、彼氏できたの?」



お母さんにそう聞かれ、あたしは照れながらもうなづいた。



「よかったわねぇ。このまま彼氏もできずに過ごしてたら、どうしようかと思ってたのよ」



「そ、そうなの?」



「えぇ。だって、就職も難しい、彼氏もできないじゃ、月奈いずれ1人ぼっちよ?」



スラッと傷つくことを言われて、あたしはムッとする。



別に、就職できなくても彼氏がいなくても、1人ぼっちじゃないもん!



友達、いっぱいいるんだから。



最近では、妖精の友達までできちゃったんだからね。



なんて事、口に出しては言えないけれど、そうやって心の中で反論する。



そして、あたしはハッとした。



ご飯に夢中ですっかり忘れていたけれど、あたし今日美影たちを会ってなかったんだ。



コンビニまで様子を見に行くつもりだったのに、のんびりご飯食べてる場合じゃないよ!!



そう思い出したあたしは、残りのご飯を一気にかきこんだ。



「だらしない食べ方しないの月奈」



怒られたっ!



「ご、ごめん。あたしちょっとコンビニ行ってくるね!」



今度はお母さんから引き止められるより先に、家を出ることに成功した。



それから徒歩数分でバイト先のコンビニに到着。



中へ入っていくと、「あら鳥谷さん。こんな時間に買い物?」と、バイトさんに声をかけられた。



「はい、ちょっと……」



曖昧に返事をしながら、店内を歩く。



足元に注意しつつ、美影たちの姿を探すが、売り場にはいないみたいだ。



あたしは特に食べたくもないお菓子を1つ取り、レジに向かう。



レジの周りにも、美影の姿はない。



徐々に、気持ちが焦り始める。



一体、どこへ行ったの?



「120円です」



そう言われて、小銭を探す。



ちょうど120円あったけれど、あたしはわざと300円をキャッシュトレイに置いた。



少しでも長くレジを開けるように、そうしたんだ。



「300円お預かりします」



ガシャンっと音がして、レジが開く。



あたしは身を乗り出してその中を確認した。



でも……。



いない……。



レジの中にも、美影の姿はなかったのだ。




あたしは落胆し、なぜだか心に穴が開いてしまったような気持ちで、家に帰ったのだった。



☆☆☆


「急にコンビニなんて、どうしたの?」



帰ってきたあたしに、リビングにいた陽菜ちゃんが不思議そうな顔をして聞いてきた。



あたしは買ってきたお菓子をテーブルに置いて、泣きそうな顔で陽菜ちゃんを見る。



「どうしたの?」



「いなかった……」



「誰が?」



「美影と、白堵……」



あたしの言葉に陽菜ちゃんは眉をよせて首をかしげた。



「あたし、今日仕事の帰りにコンビニに寄ったけれど、妖精たちいたわよ?」



「うそっ!?」



「本当よ。いつものようにレジに入ってて、『こんばんは』って」



陽菜ちゃんが嘘をついているとは思えなかった。



じゃぁ、どうしてあたしの前には現れてくれなかったの?



「あたし、避けられているのかな……」



「そんなことないと思うけれど……」



陽菜ちゃんは考えるように天井を見上げた。



「突然見えるようになったものは、突然見えなくなるのかもしれないね?」



「え?」



陽菜ちゃんの言葉に、あたしは切なくなる。



見えなくなる……?



「妖精が見えるようになったキッカケがわからないから、見えなくなるキッカケだってわからないじゃない?」



「あたしは、知らず知らずに妖精が見えなくなってしまうようなことをしていたって、こと……?」



「もしかしたら、そうかもね?」



そんな……。



あたしはどうすればいいかわからずに、キュッと拳を握りしめた。

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