第17話

こんな場所にも、妖精がいたなんて!!



美影や白堵が見えるようになってからも、全然気がつかなかった!!



「そいつ、俺たちのことが見えているのか?」



黒髪メガネの菜戯という妖精がクイッとメガネをかけなおしながら、美影と白堵に声をかけた。



「そうだよ。名前は月奈ちゃん。みんなも知ってるよね?」



白堵がそう答えて、にこっと可愛い笑顔を見せた。



「まじか。これでタバコに困らねぇな」



ツンツン金髪頭の汰緒がそう言い、灰皿の中の湿気たタバコを見た。



「汰緒、お前は少し禁煙しろ」



「美影、自分が禁煙したからって人に文句つけてんじゃねぇよ」



「まぁまぁ、2人とも。いいじゃない、タバコくらい。どうせ人間が吸ったカスを吸っているだけなんだから汰緒は」



「白堵、軽はずみな発言はよせ。タバコというものは100害あって1里なしと、人間も言っている。それでもやめられなくなるという、恐ろしい代物だ」



「菜戯、説教はやめてくれ、耳にタコができる」



汰緒がキュッと顔をしかめて、両手で両耳をふさいだところで、妖精たちの会話が止まった。



え、えーと……。



机の上の2人と、床の2人を交互に見つめて固まってしまうあたし。



一体、これはどうすればいいんだろう?



美影と白堵だけで十分ビックリしていたのに、更に2人増えてしまった。



と、とりあえず、美影たちは外へ出てみたいって言ってたよね?



それで、仲間も一緒がいいって。



「汰緒、菜戯、はじめまして……で、いいのかな? あたしは月奈。って、知っているよね……。その、えっと……美影たちから聞いたんだけど、外に出たいの?」



あたしの問いに、汰緒と菜戯は一瞬目を丸くして、そして2人同時に頷いた。



その様子に、ほっとするあたし。



さっきまで喧嘩しそうな雰囲気だったけれど、案外仲がいいのかも?



「じゃぁえっと……みんなで外に出てみる?」



「「出られるのか!?」」



同時に言われ、今度はプッと噴き出してしまった。



やっぱりこの2人、とっても仲良しみたいだ。



「いいよ、じゃぁみんなあたしのバッグに入ってくれる? ちょっと狭いけど、家につくまでは我慢してね?」



そう言い、あたしは妖精4人をバッグに入れて事務所を出た。

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