第14話

そう思うが、グッと我慢する。



「だいたいさ、俺らがずっとレジの中にいるって考えるほうがおかしくね?」



「へ?」



「開いたり閉まったりして落ち着かねぇから、たまにはこうやって店内で遊んでやんだよ」



「ふ……ふぅん?」



たしかに、レジ内は落着かないだろうけれど。



「よく、出られたね」



「おう。人間がお釣りを出すときに、手に甲に飛び乗るんだ。それからレジに飛び移って、外に出る」



当たり前だろ?



という雰囲気で話すので、もう何度もこうして店内で遊んでいたのだろう。



「あ、月奈!!」



1人で走りまわっていた白堵が、ようやくあたしに気付いて駆け寄ってきた。



少し汗を滲ませて走ってくるその姿があまりに可愛くて、あたしは思わず微笑んだ。



「走るの楽しい? 白堵」



「うん! ここ広いからいくらでも遊べるね!」



人間にとっては小さなコンビニでも、妖精にとっては巨大な運動場になるのだろう。



にっこりと笑う白堵を、思わず、持って帰りたい、なんて考えてしまう。



「お前、ここ最近休みねぇな」



美影に言われて、あたしは「そうなんだよねぇ」と、眉間にシワをよせた。



実は今日も代理出勤だったりするんだ。



あたしが休みたいときに代理をしてくれる人はいないのに、都合よく使われているあたし。



シュンとして落ち込んでいると、美影があたしの足首をさすった。



「無理、すんなよ」



「え?」



「頭は遠くて届かねぇから、足首で我慢しろ」



そう言って少し頬をそめる美影。



もしかして、あたしのこと慰めてくれているの……?



「あり……がとう」



心の中がじんじんと熱くなってくるのがわかる。



美影、口は悪いけど案外いい子なのかも?



そんなことを考えていると、お局さんから「いつまでボーッとしているの? 手伝いなさい!」と、怒鳴られてしまい、あたしは慌てて立ちあがったのだった。

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