第13話

この作業は体力も使うし、売り場のホコリで喉も傷める。



「接客しながら、売り場換え?」



今日一緒に入るベテランのバイトさんに尋ねてみると、「当たり前でしょ」と、返されてしまった。



やれやれ。



せめて相方が和心なら多少サボれたのに。



お局さまじゃサボれる気がしない。



あたしはしぶしぶ売り場へと出て行ったのだった。



売り場へと出たあたしは、その光景に唖然として立ちつくした。



『その光景』って、どの光景かって?



「おい、白堵待てよ!」



「美影、こっちこっちぃ!」



店内の走りまわる、2人の妖精の光景だよ。



パタパタと小さな足音を立てながら、美影と白堵が店内で追いかけっこをして遊んでいる。



店内で走るのは禁止です!!



って、そうじゃなくて!!



なんで外に出てきているの!?



いつもレジの中にいたはずなのに。



あたしは慌てて美影のそばにしゃがみ込んだ。



「ちょっとあんたたち、なんで外に出ているのよ!?」



小声で怒鳴ると美影がこちらを見上げて「あぁ?」と、面倒くさそうに言った。



「なんで外にいるのよ?」



「一度聞きゃわかるっつぅの。二度も言うなよ」



チッと舌打ちをして、商品棚にもたれかかった。


この、生意気な態度どうにかならないの!?

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